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(R&B)+平安文学=EXILE

Thursday, November 20th, 2008

CDのミリオンセラー(シングル)が出なくなったよね。
このままで行けば、今年は一曲も出ないかもしれない。
おそらく、こんなことは、1990年以降では初めての状況である。

でも、こんな時代ではあるけど、現在、最も、今日的なメジャーアーティストは誰かと問うならば、EXILEという答えに異存無い人は多いと思う。それほど、彼らの楽曲はヒットチャートの常連なのである。
さて、このEXILEであるが、その特徴はR&Bを基礎とした官能的なサウンドと世界観にある。
わかりやすい言葉で言えば、その世界は「不在の彼女(彼氏)が残していったぬくもりを愛おしく思う一瞬」を歌にした感じだ。

例えば、彼らの代表曲「ただ・・・逢いたくて」。

ただ逢いたくて…もう逢えなくて
くちびる噛みしめて泣いてた。
今逢いたくて…忘れられないまま
過ごした時間だけがまた一人にさせる

そして、昨年のヒット曲「I believe」。

君のもとへ飛んで行きたい
いつもそばで感じていたい
瞳閉じて君を映し出す
今だけは寄り添って 君だけを感じたい
繋いだその手を 離さないように
君がいる季節は 何よりも輝いて
優しく包んでくれるから

さらに、最新のヒット曲「Ti amo」。

日曜日の夜は ベッドが広い 眠らない想い 抱いたまま朝を待つ
帰る場所がある あなたのこと 好きになってはいけない わかってたはじめから
どれだけの想いならば 愛と呼んでいいのでしょうか?
この胸をしめつけてる この気持ちに名前をください

これらの歌詞には、くちびる、瞳、手、胸という肉体的な言葉がちりばめられているが、それが彼らの創り出す世界をなまめかしくしているんじゃないかな。
相手の不在を想い、心を焦がすというのは、恋の基本シチュエーションだが、このEXILEの世界の艶かしさって、どこかであったなぁと思い返してみると、実は日本の伝統、平安王朝の和歌の世界がまさにそれなんだよね。言うまでもないんだけど、平安時代の貴族階級ってのは、通い婚なんだよね。男が女の屋敷に夜這いをかけるのが唯一の逢う方法。だから、女は待つしかない。その待つ身の切なさが平安文学を生む土壌にあるんだよね。

例えば、その代表歌が、待賢門院堀河の有名な一首。百人一首にも引かれてるから知ってる人も多いと思う。

ながからむ心もしらず黒髪の乱れて今朝はものをこそ思へ
(ずっと好きだよって言うあなたの気持ちも、本当かなぁって思ってしまう。あなたが行ってしまった朝の寝乱れた黒髪のように心が乱れるんだから)

また、同じく百人一首にある藤原道綱の母の一首。

嘆きつつひとりぬる夜の明くるまはいかに久しきものとかは知る
(また、来てくれなかったあなたのことを嘆きながら過ごす独り寝の夜が、こんなに長いなんて、あなた、わかってるのかしら)

ねっ、EXILEの世界と通底しているでしょ。
EXILEが、現代日本で受けているのは、R&Bのリズムと日本独特の平安貴族の感性の融合が生み出す肉体性(官能性)なんじゃないかな。

だから、昨年の日本レコード大賞の授賞式で、最優秀歌唱賞受賞の瞬間、ATSUSHIの後ろで作り笑いをしていたパフォーマーの面々、そんな顔をする必要は無いんだよ。
パフォーマー達のダンスがあるからこそ、EXILEの世界の肉体性がリアリティを帯びるんだからね。

まさむね

日本の伝統で和歌だ!

Wednesday, June 25th, 2008

夏の夜は
まだ宵ながらあけぬるを
雲のいづこに月やどるらむ

この歌は、清少納言の曽祖父の清原深養父の歌。百人一首にも選歌されている。

先日、思いの他、早く起きてしまった明け方、何気なく、この歌が口をついて出た。

歌が突然、腑に落ちるのはこんな瞬間だ。
夏の明け方のまどろみの気持ち良さ、いやおうなく過ぎてしまう時間の残酷さ、月に対して、あたかも旅人のよう接する優しい視線、そういったものが一気に、理解できる瞬間だ。
おそらく、日本の伝統とは、100年前に出来た靖国神社に行くというような事ではないと思う。
こういった1000年も前に作られた歌が一瞬にして理解できるような感性の地下水脈こそ伝統というものではないだろうか。

高校の時に、百人一首の暗記させられ、本当に辛かった思い出がある。
その頃は、30年後に突然、このような感動的な瞬間が訪れようとは考えもしなかった。
体で覚える暗記って一見無駄のようにも思えるけど、長い潜伏期間の後、宝物のような輝きを見せることがあるんだね。
逆に今は、その頃の教育に感謝している。

ちなみに、以下、この歌の現代訳です。

夏の夜は短い。
宵になったと思ったら、もう明けてしまった。
こんなに早く明けてしまったので、月も西の山に行き着けなかったんじゃないかな。
雲のどこかに宿を取っているんだろうか。

まさむね