THE BEATLES(DISC-1) TOCP-51119-20 ●ビートルズ初の2枚組。アップルレコードからの最初のLPとなる。 |
Sgt.Pepper’s Lonely Hearts Club Bandであらゆることをやってしまったビートルズ。彼らの次なる仕事がこのThe Beatlesだった。でもとにかく、演りたい曲をどんどん録音していって後で2枚組にしたって感じもしなくない。音楽ジャンル的には、ロック、フォーク、カリプソ、カントリー、ヘビーメタル、バロック、ブルース、ムード歌謡、童謡、ポップス、アバンギャルド等、あらゆる音楽が詰め込まれていると評されることが多い。 でもよく聴いてみるとトータルで彼らが当時もっていたテーマが見えてくる。 それは、個人と全体、個人と社会、個人とビートルズその相克だ。Revolutionでジョンが発表する「みんな」としては革命には協力するよ、でも僕個人はちょっと待てってそういう揺らぎ。 このアルバムが「The Beatles」っていう名前に落ち着く前、「A doll’s House(人形の家)」だったということは示唆的だ。The Beatlesという絶対の存在の前で、ビートルズの一員という役割に限界を感じていたジョン。彼にとってのビートルズとは、この時期、人形の家(不自由な家)にすぎなかったということではないのか。 しかし、結局は、「The Beatles」という名前に落ち着く。「A doll’s House」こそが「The Beatles」だっていう隠しテーマを残したまま... アルバム一つ一つにユニークに付けられたシリアルナンバーは体制の中で唯一、個を区別する記号だったのか。ちなみに、私が持っていたLPの番号は、A190657であった。ちなみに0000001番は、ジョンが持っていたという。 |
Back in the U.S.S.R. ★★★★★ ◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/8/22,23 ●タイトルは、チャックベリーのBACK IN THE USAのパロディ。 ●コーラスはビーチボーイズのパロディ。 ●また、レイ・チャールズの「Georgia’s always on my my…mind」のパロディ。 ●リンゴは、一時脱退していて参加していない。ドラムスはポール。後に、このドラミングをリンゴは褒めている。 当時のソ連っていうのは、西側諸国からしてみれば脅威の国だよね。暗黒の警察、官僚、共産党の圧制国家だ。 ちょうど、この曲が収録された前の月にソ連はチェコスロバキアに侵攻した。いわゆるプラハの春(自由)をつぶしたんだ。 だから、当時のソ連っていうのは今でいうならば、北朝鮮みたいなイメージの国。だから、この「Back in the U.S.S.R.」って、「北朝鮮へ帰れ」みたいなニュアンスで捕らえるのが近いんじゃないかな。 楽曲的に言えば、ポールがリードギターを弾いている。ポールのリードギターっていうのはディストーションが効いていて迫力あるんだよね。ジョージのギターが「音質」の澄みにこだわっているのと対照的だ。また、6弦ベースを弾いているのがジョン。ジョンが弾くベースは、地味、悪く言えばヤル気はあんまり感じられない。一方、リンゴがいないんでドラムはポール、ジョン、ジョージの3人が少しづつ叩いているらしい。はたして3人で叩く必要はあったのか。 ちなみに、歌詞の中で、ホテルに到着した主人公はホテルに到着するやいなや、連れのオンナに電話線をまずはずさせている。「You Won’t See Me」とかで電話してもつながらいことにイライラしているっていう歌詞があったけど、ポールは本質的に電話が嫌いなんじゃないかな。一方、ジョンは電話好きっていうか、電話がよく歌詞に出てくるよね。(「Any time at all」、「No reply」等) でも、こうった「好きなものは好きって言うんだ。だって僕たち自由だもん」的な価値観こそがビートルズの本質とも言えるんだけど(By 吉田拓郎「ビートルズが教えてくれた」より)。 ポールって何でも出来るんだね。ただのビーチボーイズの真似じゃない。名曲だ。 |
Dear Prudence ★★★★☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/8/28,29 ●インドでの瞑想キャンプ(リシュケシュ)に参加したビートルズ面々。その時一緒に参加していた女優ミア・ファロー(代表作「ローズマリーの赤ちゃん」)の妹のプルーデンス・ファローが瞑想によって、アイデンティティ・クライシスの症状に陥って、小屋にこもってしまった。そのプルーデンスを励ますために、小屋の外でジョンがこの曲を歌い彼女を出てこさせようとした。(ちなみにこのミア・ファローは、チベット問題を踏まえて、スピルバーグに、北京五輪開会式のアートプロデューサを降りるように説得したって事で、最近、ニュースになったよね。一方、プルーデンスはどこで何をしているんだろうか?) ●リンゴは全曲に引き続き不参加。ポールが代わりにドラムを叩く。エンディング近くの乱打はポールの個性。 ●昔とある評論家が、この曲でドラムをポールが叩いているというのを知らなくて、リンゴはDear Prudenceの時のように激しいドラムが叩けるんだからいつもそのように叩けばいいなんてことを書いていたらしいけど、これぞ赤っ恥評論だ。ただし、ビートルズの情報は当時(70年代位まで)あんまり公表されていなかったから、攻めるのも可哀想だ。今だから笑える話ではある。 ●アルペジオのギターは同じキャンプでドノバンに教わったジョンが奏でる。 今で考えるならば、ビートルズに曲を作ってもらって励まされたっていうのは、このプルーデンスとジュリアンレノン。羨ましい限りだ。音楽を奏でて閉じ篭った人を外に出させようとするっていうのは、古事記の天の岩戸の神話を思い出すよね。 Dear Prudence, won’t you come out to play ジョンの優しさあふれる名曲だ。 The birds will sing that you are part of everything あるいは、意訳すると「鳥達は、君がいなきゃ世界は世界じゃないって歌う」) このアルバムの中でも最も、リシュケシュっぽい曲。ジョンの優しさ満ち溢れ... |
Glass onion ★★★★☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/9/11,12,13,16,10/10 ●Strawberry Fields Forever、I Am The Walrus、Lady Madonna、The Fool On The Hill、Fixing A Hole等のビートルズナンバーが歌詞に織り込まれている。 ●Walrus is Paul(ウォラスはポールだ)っていう歌詞が当時、話題になった。 中山康樹氏曰く、ホワイトアルバムも3曲目。この曲のリンゴのイントロのダダッでやっとビートルズの音になったということだ。なるほど。 楽曲的にはポールのベースがゴリゴリしていて素晴らしい。ジョンの歌も以前のような邪悪な感じがしてカッコいい(ひさびさにOhYeh~が聴ける)。 エンディングで不協和音のバイオリンやチェロが入るが、それがなんかリスナーを不安にさせる。このホワイトアルバム全編を通底して流れる言うに言われぬ不気味さと連動している。僕は、これはヘロインかなんかでトリップして夢の世界にいたがの一転してバッドトリップになった瞬間を表現しているとみるが、果たしてどうだろうか。 歌詞で注目したいのは2箇所 1)Looking through the bent backed tulips to see how the other half live ジョンは、遺作となったダブルファンタジーのWomanのイントロ部分で「For the other half of sky」(空のもう半分のために)という毛沢東の言葉の一節をつぶやいているが、GlassOnionのこの箇所は、その発想とつながるものを感じさせる。68年当時のジョンの愛読書は「毛沢東語録」だったという話もあるしね。 2)Fixing a hole in the ocean Trying to make a dove-tail joint このoceanというのは、ヨーコの事だと思う。(ヨーコの事をOcean childっていうしな)そのヨーコ(Ocean)の穴を埋めるっていうのはヨーコとセックスするって事。「鳩の尾っぽ型の蟻継を作ろうと」ってペニスを勃起させながらってことでしょ。 もう少し言えば、そのフレーズのちょっと前にこんなフレーズが出てくる。 I told you about the fool on the hill I tell you man he living there still これを意訳するとポールはまだ、丘の上にいるけど、僕(ジョン)はもう別の場所にいるんだぜという事。ジョンの心がポール(ビートルズ)からヨーコに移った事をほのめかしているんだと思うよ。ただ、ポール自身は、「I’ve got news for you all, the walrus is Paul(みんなに知らせがある。あのウォルラスはポールだったんだよ)”の部分を作ってるときはおかしかったな。」と言ってるから真実はわからないがね。 こういう深読みがビートルズを聴く楽しみだと僕は思う。また、そういった仕掛けをありとあらゆるところに張り巡らせてしかも、表面的には素晴らしい作品になっているところにビートルズの天才があるんだと思う。 リンゴのクリアなドラムとポールのソリッドなベース、それにジョンの邪悪な声、いいよね。 |
Ob-La-Di,Ob-La-Da ★★★★☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/7/8,9,11,15 ●日本ではシングル版として発売されたため、人気があるっていうか知名度が高い。(※僕の妻も中学の吹奏楽部の時の新入生歓迎会でこの曲を演奏したっていう話。)CXのポンキッキ、NHKのみんなの歌、日産の車のCMなどで使われ、流された。 ●ポールが何回もやらせたんでみんな呆れたというエピソード。イントロのピアノはジョン、イライラの絶頂にあった彼がドラッグをやってヤケになって演奏したところ、それが採用されたという。 ●OB,LA,DI,OB,LA,DAとはアフリカのヨルバ語で人生は続くよ(life goes on)という意味らしい。この曲をいつもつぶやいていた酔っ払いのコンガ奏者・ジミー・スコットからポールが拝借したとの話。ポールは、後に、使用料(謝礼)を払ったらしい。 ●インターネット上で行なわれた『Worst Song Ever(これまでで最悪な曲)』投票で堂々の1位に輝いた。 ●ホンダ・ステップワゴンのCM曲 ●微妙な聴き所。ポールがhandと歌った後にジョンがarm、ジョージがlegと歌っているところ。 この曲の面白いところは、歌詞の最後で男(デズモンド)と女(モーリン)が逆になるところ。最初はデズモンドが市場で働き、モーリンは夜クラブのバーで歌うために化粧をするだったのが、最後の一節では、モーリンが市場で働き、デズモンドが夜のクラブで歌うため顔に化粧をするに入れ替わっている。僕が面白いと思ったのは、この曲から10年後位に実際、ジョンとヨーコはこういう関係になったということ。ジョンは家で子育て。ヨーコは資産マネージメントの仕事をすることとなった。ある意味、予言ソングだよね。 ちなみに、ビートルズの曲にはたまに美人だけど男勝りの女が出てくるよ。 She’s so good-looking but she looks like a man(Polythene Pam) Sweet Loretta Martin thought she was a woman but she was another man(Get back) the bag across her shoulder Made her look a little like a military man(Lovely Litta) アッシャーもリンダもヨーコもパティもモーリンもみんなそんな面を持ってるような… 楽曲的には、スカとかカリプソのリズムとか言われるけど、僕は音楽の知識が無いのでよくわからん。ホワイトアルバムが様々な音楽のごった煮と呼ばれる時、必ずこの曲も引き合いに出される。でも演奏は凄く自然だし、上手いと思う。 誰でも知ってるビートルズのスタンダード曲。誰でも知っているってのは凄い事だよね。 |
Wild honey pie ★☆☆☆☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/8/20 ●ビーチボーイズの「ワイルドハニー」というアルバムへのオマージュともパロディとも言われる。 ●ポールが歌から楽器から全部一人でやっている。 ●お~にた~(大仁田)の空耳曲としても有名。 よく、この曲のことをホワイトアルバムで一番嫌いだと言ってる人がいるか、それほど目くじらを立てるほどのモノか。どうでもいいって言えばどうでもいい曲。このパイっていうのはリバプール地方では、ヴァギナの隠語らしい。だから、Wild honey pieというのは、野暮意訳すれば、(毛むくじゃらで甘いおまんこ)って意味かな?同様にPenny Laneのフィッシュ&フィンガーパイとかも卑猥な表現とのこと。 ポールって時々、こういったエッチなフレーズを入れるんだよね。 ポールが大活躍。でも、このアルバムに入れる必要あったのかな? |
The continuing story of Bungalow Bill ★★★☆☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=John,Yoko 収録日=1968/10/8 ●ヨーコやモーリンも参加してコラース(ヨーコはソロも)歌っている。 ●ポールは収録に参加していない。 ●冒頭のスパニッシュギターは、クリス・トーマスのメロトロンで作り出したもの。ジョージじゃない。残念。 ●インドの瞑想キャンプで一緒だったタイガーハンティング自慢の男のことを歌った。 ポールが収録に参加していないのはどうしてだろうか。ヨーコが参加するっていうんで嫌気がさしてサボッたっていうのが定説。実際のところはわからん。 後に自然保護主義になったポールはそういった観点からこの曲を凄く評価しているのが笑わせる。「ビートルズの歌のすごいところは、僕らの歌の多くが、時間が経過しても有効であることだよね。この曲も、時と共にますます価値を増した曲の一例だ。より現代の問題に密着してるだろ。狭い小屋で飼育される子牛や、虎やサイなどの絶滅寸前の動物を狩猟している現状を考えると、この歌は非常に意味がある。内容が素晴らしいよ。」と述べている。だったら参加しろよって突っ込みたくなる。 面白いのは以下のフレーズ。 The children asked him if to kill was not a sin これは明らかに当時のベトナム戦争を肯定するアメリカに対するあてつけ。ベトコン(ベトナムの共産主義ゲリラ)は恐ろしい。だから、その恐ろしい相手を殺すことは罪じゃないの。っていってるんだよね。このアングロサクソンのママは。 おっとどこかで聞いた事あるなぁこのフレーズ。そう、これはイスラム過激テロが怖いっていうんでイラクを攻撃したブッシュアメリカの論理と一緒だよね。だから、そういう意味でこの、30年前も今もアメリカは同じ事をやってる。もっと言えば、開拓時代のインディアンや、第二次世界大戦での日本に対しても同じような論理が援用されたんだ。アメリカの本質を言い当てたフレーズとも言える。 っていうことは、このジョンの批判的な歌詞は現代も生きているんだよね。 ヨーコの声が目立つ。好き嫌いの分かれる曲。 |
While my guitar gently weeps ★★★★★ ◆(George) V=George 収録日=1968/9/5,6 ●ホワイトアルバムの中で一番人気のある曲。ジョージの泣きそうな歌い方とか、ギターが前面に出ている点とか、70年代のロックを先取りしている…感もなくもあったりなかったりする。 ●エリッククラプトンがリードギターを弾いている。発売当時のクレジットはエディ・クレイトン。 ●ジョージがこの名曲を5月の段階でせっかく作って聴かせたのに、ジョンとポールは無視し続け、結局、収録は9月に。 僕がジョージが逆に凄いと思ったのが、その謙虚さだな。仮にもリードギターの立場の男が自分よりも数段上のギタリストを連れてきて、リードを取らせるなんていう事が出来るのだろうか。(尤も、クラプトンを連れてきたのがジョージじゃなくてポールだったら、その時点でビートルズは解散だったろうけどな。)謙虚だ!謙虚過ぎる! いずれにしても、ジョージっていう人は楽器演奏者というよりもプロデューサ指向が強いってことなんだろうな。 歌詞で注目すべきは、この曲全般を通して感じられるジョージの世界観だ。例えば下の1行、ギターがすすり泣くっていうのは明らかにアニミズム(霊魂信仰)でしょ。 I look at the world and I notice it’s turning While my guitar gently weeps また、普通だったら、世の中の流れと自分のギターを結びつけて考えるようなことはしないんだけど、さすが哲学的詩人のジョージはそうは考えない。 Dear Prudenceにおける「you are part of everything」(君はあらゆるものの中の一部だ)にもつながる世界観が垣間見られるよね。 鳴きのギターってこの曲が起源です。あまりにも名曲。 |
Happiness is a warm gun ★★★★★ ◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/9/24,25 ●あまりに卑猥と言うことでBBCでは放送禁止になる。 ●タイトルはガンマガジンに載っていた広告からの拝借。 ●和久井光司氏はこの曲をしてジョンの最高傑作といっている。 ●中山康樹氏は、今ではほんとうにギャグになりはてたと最低の評価。 ●東芝EMIのビートルズ公式サイトでの人気投票では、17位に入っていた。 ●アメリカの銃社会を批判したマイケル・ムーアの「ボウリング・フォー・コロンバイン」の挿入曲。 LOVE ME DOから早7年。ビートルズはついにココまできたかと、ある人を呆れさせ、またある人をして狂喜させた問題作。短い曲の癖に3部構成になっている。 一部 趣味の悪い歌詞が並ぶ。 The man in the crowd with the multicoloured mirrors on his hobnail boots ようするにだ。これは変態行為をやっているってことでしょ。 靴に鏡を備え付け、何食わぬ顔をしてその鏡に映した女の子のパンツを眺めながら、手でオナニーをしているってこと。情けない。あまりに情けない。これが全世界を席巻した超アイドルグループの曲でしょうか。この曲の衝撃は凄かったでしょうね。 A soap impression of his wife which he ate and donated to the Nation Trust これじゃあシンシアがあんまりにも可哀想だ。そこまで言うかジョンよ。 二部 もう露骨にヘロインとセックスの話 I need a fix ’cause I’m going down Mother Superior jump the gun このMother Superiorってのはヨーコの事、fixっていうのはヘロインの隠語。(※だから、Fix a hole っていうのは、ヘロイン注射のことともとれるか)っていうことは、ここでいうgunというのはペニスです。英国キリスト教教会女性支部長的に言えば全くゆるすべからざる表現でしょうな。 三部 絶叫に入る。 Happiness is a warm gun mama だから、この曲で歌われているwarm gunとは「射精直後の温かいペニス」と「打ったばかりのヘロイン注射」と「撃ったばかりの銃の銃口」というトリプルミーニングなんですね。あーやだ。 でもこの曲を評してポールは「これは『Bungalow Bill』のように、温かい銃を持って幸福だと本気で思ってる連中を揶揄した曲なんだ。ボーカルもすごいし、歌詞もいいし、テンポがしょっちゅう変わる面白い曲だ。かなり複雑な作品だよ。ジョンらしい。」って言ってる。ポールったら、わかってるくせに。 でも楽曲的には僕は嫌いじゃない。いや、むしろ好きなほうだ。いやいやかなり好きな曲だったりする。 しかし、この曲発表から12年後、ジョンはその銃で殺されてしまう。こんな曲を作った因果応報というのは言いすぎか。 名曲かどうかは迷っても、凄曲であることは確か。ジョンの天才技か。 |
Martha my dear こういう曲を聴くとポールの天才がわかるよね。高校の頃、このピアノのフレーズを練習したな。弾けるようになったときはうれしかった。これって今でも弾けるんだよ。 歌詞は極めて普通。犬を愛でる歌。 Hold your head up you silly girl うーん。当時、ヨーコに没頭していたジョンに対するポールの視線にぴったりでしょ。 この曲の前奏のピアノメロディは神。 |
I’m so tired ★★☆☆☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/10/8 ●インド滞在中に不眠症になったジョンの作品。 ●「I’m Only Sleeping」の親戚みたいな曲。 ジョンはこの曲に関して「僕ので、これもインドで書いた曲だ。僕は眠れなかった。一日中瞑想して、夜になっても眠れなかった。そのことを書いたんだ。僕の好きな曲のひとつだよ。サウンドもいいし、僕の歌もいい。」って言っている。一日中瞑想して、夜になって眠れなくなるものだろうか。明らかにヘロイン中毒のことだと僕は思う。 歌詞でこんなところがある。 I wonder should I get up and fix myself a drink ここでわざわざfixという言葉を使っているのが何よりの痕跡だと思う。ジョンはわざわざ歌詞の中にそういったことをほのめかす痕跡をいれているんだよね。多分、恐らく、その可能性は無くも無い…かな? 疲れた時も思わず口から出ます。この曲。 |
Blackbird ★★★★★ ◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/6/11 ●Black bird とはカラスではなく、黒いツグミのこと。 ●ポール一人で歌とギターのパーカッションを担当。 ●黒人公民権運動への支持を表明する曲(ホワイトアルバムが発表された1968年に、あの黒人公民権運動の父、キング牧師が暗殺されている。そんな時代だったのだよ。)。 この曲は、ギターの練習曲として、70年代、全国中の中学、高校の休み時間には、ギター青年がこの曲を、「天国への階段」「スモークオンザウォーター」と並んで爪弾いていた(という)。 また、この曲の思い出だが、昔、アメリカに渡った野茂と吉井があるインタビュー番組に一緒に出演していた時、吉井の趣味がギターだってことで、いきなりこの曲を引き出した事があった。ホストは絶賛したが、野茂は全くの無反応、無表情だった。その野茂表情に僕は笑った。 Blackbird singing in the dead of night ポールって励ましの曲歌わせたら凄いね。名曲でも小曲。いや、小曲でも名曲。 |
Piggies ★★★☆☆ ◆(George) V=George 収録日=1968/9/19,20,10/10 ●ジョージの社会風刺の曲。 ●バロック調。 ●1991年の日本公演で演奏した。 歌詞は社会風刺。糊のきいた白いシャツ(starched white shirts)を着た豚っていうのはようするにホワイトカラーのプチブルのことでしょ。ワーキングクラス(労働者階級)を自認する彼らのちょっとした嫉妬と皮肉だよね。 In their eyes there’s something lacking what they need’s a damn good whacking っていう歌詞を本気にしてチャールズ・マンソンはシャロンテートを殺したと言ったらしいが、他人のせいにするなよ。 面白いフレーズを探すとすれば下の1行かな。 And for all the little piggies life is getting worse ってポールが段々よくなる(Getting better)って歌ってたのに。このころのジョージの歌詞にはところどころ、微妙なポールへの反感、あてつけが感じられる。 ジョージの皮肉とバロックな曲調が見事にマッチ。 |
Rocky Raccoon ★★★☆☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/8/15 ●ジョンがビートルズでハーモニカを弾いた最後の曲。 ●この曲のドラミングでポールがリンゴに高圧的な指示を出し、それに嫌気がさしたリンゴが現場放棄したとの説がある。 ●アメリカの銃社会を批判した曲。 ホワイトアルバムには、銃(gun)に言及した曲が3曲も収録されている。言うまでも無いが、「THE CONTINUING STORY OF BANGALOW BILL」「HAPPINESS IS A WARM GUN」「ROCKY RACCOON」の3曲だ。これらの曲は、銃で全てを解決しようとする暴力主義批判である。 この年、キング牧師、ロバートケネディが暗殺され、ベトナムではソンミ村の大虐殺、ヨーロッパでは、ソ連によるチェコへの侵攻。パリでは学生暴動等、日本でも東大紛争、三億円事件、金嬉老事件や永山則夫事件が起き、全世界的に騒然とした年だった。その年に発表されたホワイトアルバムはそんな世相を反映してか、よく言えば、多様、悪く言えば混沌としている。ようするにもめにもめた世相を反映して、ビートルズ自身も内輪もめをしはじめたんだと言えなくも無くも無い。か? さて、このROCKY RACCOONだが、愚直な田舎もののロッキー・ラクーン青年は、本名はマギルという名前のくせに、自分のことはリルと呼び、みんなはナンシーと呼んでいた、ようするに江戸時代的に言えば、遊女、現代日本的に言えば、キャバ嬢に入れ込んでしまったわけですな。そのマギルがある男と駆け落ちして街に出て行ってしまった。怒り狂ったラクーン青年、相手の男を仇と勘違いし、銃を用意し、街へ出て二人が泊まるホテルへと乗り込んでいった。 っていう話ですね。でこの曲でポールは何を言いたかったかっていうと、アメリカ人の素朴な暴力主義を批判してるってことなんですね。 楽曲的には、マーチンのホンキートンク風のピアノとジョンのハモニカがいい味出しているってところかな。僕的にはせっかく、冒頭のセリフみたいな歌みたいな部分を覚えたんだけど、カラオケにこの曲が無くて凄く残念ってところか。 歌いだし部分はビートルズ随一の難しさ。 |
Don’t pass me by ★★☆☆☆ ◆(Ringo) V=Ringo 収録日=1968/6/5,6,7/12,22 ●リンゴが作った最初の曲。 ●ホワイトアルバムの多様さに言及されるとき「カントリー等」といわれるのはこの曲のこと。 ●フィドルという土俗的バイオリンが使われたビートルズ唯一の曲(リンゴよ、これがやりたかったのか)。 中山康樹氏はこの曲を凡曲としておられますが、僕は許す。 彼女を待っている男が彼女がなかなか来てくれないので段々憂鬱な気分になってくる。 Don’t pass me by 心の中で叫ぶ男。しかし、実は彼女が遅れたのは交通事故に巻き込まれたからっていう彼女からの電話が入る。疑って悪かったね。って心の中で後悔する男。まぁそんな歌詞ですな。こんなオチをつける必要があったのだろうか。まぁリンゴの処女作だし、僕は許す。 この曲に関して、「僕等はこの曲をカントリー風に演奏した。僕が自分で書いた初めての作品が出来上がったときにはすごく感動した。みんな本当によく助けてくれた。」って言ってるけど、おい、おい、ジョンとジョージは不参加じゃないか。 リンゴ初の単独の作詞、作曲作。 |
Why don’t we do it in the road ★☆☆☆☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/10/9,10 ●この曲に参加させてもらえなかったジョンが後々、ポールを恨んだという曲。 ●インド瞑想旅行中に彼らの目の前で猿が突然、セックスをはじめたことをヒントに作った。 Why Don’t We Do It In The Road なんで道路であれをしないんだ (勿論、道であれをするさっ) 知らんがな。そんなこと、って突っ込みたくなる。でも、このitは、この曲をひらめいた経緯から、SEXと取るのが正解か。そういえば、Free as a birdのプロモでも道に止まった車の中でセックスしているシーンが一瞬出てくるな。 この曲で注目したいのがジョンが、この曲に参加させてもらえなくてせつない思いをしたということ。そういえばリンゴも一時、ビートルズを離れた理由として、「自分だけ仲間はずれになって、他の3人が仲良し」に感じたからと言っている。逆にいえば、それほど、彼らはお互いを愛していたということだ。愛していたからこそ、その関係に一瞬の隙間風が吹いたときにそれがお互いを傷つけたって事だろうと思う。 変な曲。でもそのエピソードはなかなか奥深い。 |
I will ★★★★★ ◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/9/16,17 ●ジョンはTake1からTake67まで延々と木片で金属片を叩き続けたという。 ●ベースは、ポールのスキャットベース。 For the things you do endear you to me Ah you know I will 君の一挙一動が僕を惹きつけてやまない 約束するよ きっとだ って部分を歌うのがとっても気持ちいい曲です。恐らくこの部分を歌うのが、僕的にはビートルズの曲のカラオケで一番気持ちいい瞬間だね。 もっと拡大して言えば、ここ、ここ。(特別に、今回は、コード付きだよ) Dm F Bb C7 Db7 曲としてもいかにもポールらしい秀作。 |
Julia ★★☆☆☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/10/13 ●ジュリアとはジョンの母親のこと。 ●歌詞の中に出てくる Ocean chlld っていうのはヨーコのこと。 ●ビートルズの曲の中で唯一、ジョン一人で収録した曲。 ●ホワイトアルバムで最後の収録された曲。 この曲といえば、必ず、Oceanchildのことが言われるけど、歌詞の中で一番、美しいのは下のフレーズだと僕は思う。 Julia, Julia, morning moon, touch me RCサクセッションに「多摩蘭坂」という歌に、「お月様見ている。♪君の口に似てる♪キスしておくれよ、窓から♪」 ジョンがヨーコを真正面から歌ったはじめての曲。 |