LET IT BE TOCP-51123 ●発売は1970年。ビートルズ最後のアルバムとなる。 |
1969年に入って、ビートルズのメンバーはほとんどビートルズの活動に興味を失っていた。その中でひとりポールだけが、みんなのケツを叩く。リハーサルを含めて撮影して、最後にどっかでライブにする。そしてそれを映画にするっていうコンセプトでこのセッションは始められた。ただ、もうみんなの気持ちはひとつにならない。 ホワイトアルバム時点では個々人のエゴのぶつかり合いの末でも、かろうじて保っていたビートルズというイメージはここにきて、もはや形骸化していたってこと。特にジョンは常にヨーコを横にはべらせ、心ここにない演奏を続ける。この「痛さ」こそ今のビートルズなんだってことを言わんが為の撮影になってしまった。Abbey Roadが音楽でビートルズの最後の演出をした、とすれば、このアルバムはスキャンダルでもってその最後を演出した、とも言えるんじゃないかな。 でも、そこにビートルズがいる。それだけでこの映画も、アルバムも大ヒットしたんだよな。 また、あるイベントで新宿・京王プラザホテルにルーフトップコンサートが大写しにされたのもわざわざ見に行ったな。 |
Two Of Us ★★★☆☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1969/1/31 ●ゲットバックセッションにおいて、この曲の練習中にジョージとポールは口論となる。 ●Two of us の二人とはポールとリンダ(ポール談)。 僕は、アルバムLet it Beの構成曲は、それぞれが、解散への物語の1コマだと思っている。 さて、Two of usだ。ポールとジョンのコーラスはそれだけで感涙ものだ。それにジョンの口笛もいい味だしてるよな。誰だってこの姿を見れば、Two of usをポールとジョンだと思うよな。それに以下の歌詞を見ればさ。 You and I have memories この「君と僕の長い思い出」をさかのぼって、元いた場所に彼らは帰れたのか?これがアルバム「Let it be」 のテーマなんだと思う。 We’re on our way home We’re going home また注目の1行は次の1行だ。 You and me chasing paper Getting nowhere ここでのpaperは、アビーロードの「You never give me your money」で歌われている、You only give me your funny paperのpaperと同じものだと思う。この頃のアップル社をめぐる様々なわずらわしい契約書類のことだろうな。ようするに、ポールもジョンもそういった雑事がほとほと嫌だったんだと思うよ。だって、彼らは芸術家だからね。 ジョンとポールのコーラスが切ない名曲。 |
Dig A Pony ★★☆☆☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1969/1/30 ●最初はAll I want is youというタイトルだった。 ルーフトップコンサートでも歌われたよね。歌詞カードをスタッフが掲げて、それをジョンが見ながら歌ってたよな。確かに、語呂合わせでつながっていく曲だから作者のジョンも覚えられなかったんだろうな。(まぁ、昔からメチャクチャ歌うのがジョンの個性なんだけどね。)でも、この曲の歌詞のつらなりはただのつらなりじゃない。Canでつながっているっていうのがポイントだよね。つまり、何でも出来るよ、出来るよ、出来るよって励ましている歌なんだな。そう考えれば、ジョンのヨーコへの優しさあふれる曲なんだと思うよ。 you can penetrate any place you go 具体的に何をしたらいいのかわからんけど、励まされた気になるでしょ(笑) この曲にも面白いフレーズが隠されている。それは2番だ。 ここで言うmoon dog はビートルズの事(ビートルズはデビュー前、1959年頃、一時ジョニー&ムーンドックスと名乗っていた)だと思われる。そして、次にI roll a stoney これは、「僕はローリングストーンズだってこと。」。 「僕はビートルズに追いつく。僕はローリングストーンズ、すべてをビートルズを真似ることができるよ。」ってようするにWe love you(この世界に愛を)でAll you need is love をパロり、サタニックマジェスティーでSgt.Pepper’s Lonely Hearts Club Bandを真似たストーンズへの皮肉ですね。 最後のこのタイトルの意味だけど、Dig a ponyってのは馬を掘れ!ってなんだか卑猥な命令文だよな。でもさらに深読みするとPony = Pretty ONo Yokoのことになるんだよね。 ジョンのエゴ丸出しって感じの曲。この曲の強引さは、僕は好きだ。 |
Across The Universe ★★★★★ ◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/2/4,8,1970/4/1 ●Let it beのバージョンは、テンポを落とし、オケとコーラス隊をかぶせてある。勿論、フィルス・ペクタのアレンジ。 ●映画の中で、この曲をやっている時にポールがあくびする。 ●2005年全世界を騒がせたピアノマンがこの曲を弾いたとの報道が。ガセだったがこんな所にもビートルズの存在感が。 ●NTT東日本のCMで使われる。このCMにはSMAPが出ていた。 ●三井不動産レジデンシャルのCMとしても期用される。ただし、ケネディ・クワイアのカバー。 好きな曲の一つだな。曲が素晴らしいしジョンの声を素晴らしい。ビートルズの最高傑作のひとつだと思う。 でも、この曲のイメージは多くの人は、言葉がコップから溢れ出てくるってところから成り立ってるんだと思うけど、以下のところが重要なんじゃないかと思っている。 Nothing’s gonna change my world 重要なのは、他には左右されない自分自身の世界だって価値観。これは、言うならば、ビートルズの中心価値であり、当時の状況とシンクロして、多くの人々が共感したコンセプトでもあるよね。 この考え方は、もともと1)Rainそして、2)Within you without youから、引き継がれた価値観なんだ。 1)Rain 2)Within you without you それにしても、ビートルズの曲はそれぞれの曲の関連性を見ていくと見えてくるものがあるよね。それだけ、彼らが自分の作品に対して誠実だったって事が在ると思う。 また、注目の歌詞は別にもある。以下だ。 Thoughts meander like a restless wind inside a letter box ジョンは観念とか思考とかに関してあんまりいいイメージを持っていなかったんだろうな。 See the people standing there who disagree and never win これは、大事なものは、論理よりも感性だ。ビートルズ革命のもう一つの重要コンセプトだ。 時間が経つに連れて、評価がうなぎ上りした名曲。 |
I Me Mine ★★★☆☆ ◆(George) V=George 収録日=1970/1/3,4/1 ●ビートルズ最後のレコーディングになった曲。 ●映画Let it be ではこの曲にジョンは参加せず、ヨーコとワルツを踊っていた。 ジョージ自身はこの曲は自分のことを書いたと言っているが、多くのファン、評論家たちは、これはポールに対しての皮肉だと捉えた。そりゃそうだよな。僕もそう思う。少なくともポールに対してってことだけじゃなくて、当時のビートルズ、アップルのメンバーに対する歌だって言うのは間違いないと思うよ。下を見てくれや。誰だってそう思うよな。 Now they’re frightened of leaving it 自分自身の感性が重要だって言ったとしても、お互いにそのエゴを通そうとしたら、必ず、ぶつかってしまう。じゃあ他人とどうやって協調していけばいいの?これがこの歌のテーマである。 楽曲的に言えば、Let it beバージョンではフィル・スペクターによって、オケがオーバーダビングされ、1分半くらいだった原曲は約1分間引き伸ばされたという。 スペクターの仕事が最もいい方向に働いた名曲。ジョンとヨーコのワルツは印象的だよね。 |
Dig It ★☆☆☆☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1969/1/24,26 ●もともとは13分にわたるジャムセッション。その中から1分30秒切り取られてココに入れられた。 ●ジョージマーチンがシェイカーで参加。 ライクアローリングストーンってのはボブディランの曲だ。1965年だっけ。コンサートでエレキギターを持って登場したディランに裏切り者みたいな罵声が浴びせられたっていう曰くつきの曲だ。マッドバズビーっていうのは、当時のマンシェスターユナイテッドの監督ってことだ。マンUってのは、ベッカムがいたイギリスのサッカーチームでしょ。まぁ、どうでもいいことだけどね。 また、ジョージマーティンが筒状のマラカス(シェーク)振ってこの曲に参加。なんとも中途半端な絡み方だよな。ビートルズの育ての親として、これが精一杯の関わり方だったということか。 息子たちの確執をどうしようもなく見守る父親の情けなさ..。この頃のメンバーの暴走は誰にも止められなかったって事が痛いほど感じられるセッションの一幕を挿絵的に挿入した一曲って言えるんじゃないかな。 長かったセッションをここまで縮めたスペクター。いい仕事しています。 |
Let It Be ★★★★★ ◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1969/1/31,1970/1/4 ●映画「悪霊島」のエンディングテーマとして使用。 ●アルバム版とシングル版とは別ミックス。アルバムはフィル・スペクター、シングルはジョージ・マーチン。 ●Mother Maryとは聖母マリアではなく、ポールの亡くなった母親のことらしい。 Let it be(なすがままにせよ)っていう歌詞は当時、ポールのビートルズ解散に対する心情と解釈されてんだよね。もう、どうにでもなれって感じなんだろうか。でも僕は、出来る事を一生懸命やっていれば、結果はついてくるっていう前向きの解釈をしたいな。 確かに、映画Let it beの中でのこの曲の演奏はなんともせつない。やる気の無いジョンやジョージ、せつないリンゴ、その中でカメラ目線で一生懸命に歌うポール。また、Let it beのジャケットを見てみると、ポールだけカメラ目線で後の3人は向かって左の方を見ているでしょ。その目線の違いが悲しいよね。 昔、このピアノはよく練習したな。友人のO君も好きだったから、よく歌ったよ。Let it beを「レルピー♪」って歌ったな。 ビートルズの中で最も人気のある超名曲。 |
Maggie Mae ★☆☆☆☆ ◆(traditional) V=John 収録日=1969/1/24 ●リバプールのトラディショナルソング(マギーメイという娼婦を歌った歌)。 この曲は最初にポールがジョンと出会った1957年7月6日セントピータース教会の祭りでのジョンのコンサート時に演奏された曲だったという。 これをLet it beセッションで演奏したとき、ジョンもポールもそのことはわかっていたはずだ。 どんな気持ちだったんだろうね。なんかそういう二人の想いを想像すると、ただのつなぎの曲って感じがしないよね。 彼らの楽しそうな演奏を聴くだけで涙ものだ。 |
I’ve Got A Feeling ★★★★☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=Paul,John 収録日=1969/1/30 ●ポールの曲とジョンの曲を合体させている。 ●ルーフトップコンサートでも演奏された。 Two of usで「一緒に帰ろう」って言ったがLet it be で「なすがままになせ」って境地に達したポールと、Dig a pony で「欲しいのはヨーコだけだ」って宣言し、Across the Universeで「何も俺を変えられない」って言い切ったジョンがこの曲で邂逅する。 この曲で特徴的なのは、ポールのパートが全部、現在完了形なのに対し、ジョンのパートは完全に過去形になってしまっていることだ。この時間のズレ(意識のズレ)こそがこの曲の聴き所ではないか。 Oh please believe me, I’d hate to miss the train なんだか負け惜しみみたいにも感じるこのフレーズだが…一方、ジョンはこう返す Everybody had a hard year ポールはジョンはこのフレーズで、もう終わってること悟ったんだな。その悟りが、 I’ve Got A Feeling!!(キターーーーー!) なんだと思う。 ジョンのフレーズとポールのフレーズが見事に重なる。気持ちいい。 |
One After 909 ★★★★☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1969/1/30 ●ジョンがクォリーメン時代に作曲。 ●1963年に一度収録。だがその時は没。 ジョンとポールとが蜜月だった頃、ジョンが作った。 Let it beの映画の中でポールが歌詞があんまりよくないみたいなことを言ってるくせに、口からフレーズがスラスラ出て来るんだよ。当時、 よく演奏したんだろうな。メンバー、思い出の一曲だ。ノリのよさ抜群。ビートルズがロックンドールバンドであったことを今更思い出させる。 I’ve Got A Feelingでジョンが言っているEverybody had a good time(いいときもあった)、そんな頃を想像させる演奏だね。 ポールが言うようにこの曲の歌詞が変なのは、主人公が電車に乗れたのか乗れなかったのかがわからんからだ。 ノリノリのロック。僕はこのジョージのギター好きだな。 |
The Long And Winding Road ★★★☆☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1969/1/31,1970/4/1 ●フィル・スペクターが原曲にオケやストリングスやコーラスをオーバダブ。ポール怒る。 ●ソニー・ウォークマンのCM曲として使われた(矢野顕子が歌ってた)。 The long and winding road that leads to your door, この歌詞を見ると、ポールの最後のジョンへの思いを想像してしまう。映画「Let it Be」の中での演奏はあまりにも悲しい。それぞれがバラバラっていう事を白日のもとにさらしてしまったよね。でもメロディは素晴らしい。さすがポールのメロディメーカーとしての才能は抜群だ。 それにしても、未練がましいポール。 ビートルズ後もコンサートではよく演奏するポールの十八番。 |
For You Blue ★★☆☆☆ ◆(George) V=George 収録日=1969/1/25,1970/1/8 ●ジョンがスライド・ギターを弾いている(横には勿論ヨーコが)。 この曲の聴き所はジョンのスライドギターだ。 上手いか、下手かは聴き手が判断すればいいのだが、ジョンがジョージの曲に参加しているということが重要だと思うよ。 楽曲的に言えば、古きよき時代のブルースの焼き直しってことなんだろうか。この曲もビートルズの面々のルーツを知るってうえで重要か。 ミュージシャン(ギタリスト)としてのジョンが楽しめます。 |
Get Back ★★★★☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1969/1/27,28,30 ●もともと、パキスタン移民に対するイギリス政府の政策に対する抗議の意味があった。 ●リードギターはジョン。 ●Get back と叫びながら、ヨーコの事をみたいただろう、ってジョンがポールに難癖をつけたという。 アルバムの最後のジョンの目立つギターが続けて収録されたのにはなにか意味があるんだろうか。そうでもしなければ、ジョンには最後の2曲は付き合ってもらえなかったんだと考えるのは邪推か。 それにしても、このジョンのソロ、70年代のギターロック青年の必須教材の一つだったな。 歌詞は、これは露骨。ジョンにビートルズに戻るように訴えたと解釈するよ。そりゃ誰だって。Jo-Joってこれジョンのことでしょ。 Sweet Loretta Martin thought she was a woman ってこれもヨーコの事だって気づいたら、そりゃジョンも怒るよな。まぁ、ポールはそんなこと言ってはいないんだけどさ。 このLet it beのアルバムはこのGet backで終わり。戻って来いというポールの叫びもむなしく、ビートルズはさらに解散への道を進むのでした。 ルーフトップコンサートは永遠に。プラグが抜かれた時は悲しかったな。 |
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