Archive for the ‘テレビドラマ’ Category

「スキャンダル」最終回に残した11の疑問

Monday, December 22nd, 2008

TBS日曜劇場「SCANDAL」の最終回が終了した。
内容に関しては、基本的に納得出来る話だったと思う。面白かった。
最終的にサスペンス性よりも、男と女の情を描くシーンにウェイトが置かれた展開は、僕は、よかったと思う。

さて、予想(「スキャンダル」最終回を残して推理してみました)のいくつかは当たったが、多くは当たらなかった。
これに関しては、お許しください。

キャスト

高柳 貴子 – 鈴木京香
高柳 秀典 – 沢村一樹

河合 ひとみ – 長谷川京子
河合 雄一 – 光石研

鮫島 真由子 – 吹石一恵
鮫島 賢治 – 遠藤憲一

新藤 たまき – 桃井かおり
新藤 哲夫 – 石原良純

白石 理佐子 – 戸田菜穂
久木田 慶介 – 加藤虎ノ介

川島 礼二 – 植田浩望
水谷 隼人 – 細田よしひこ
勝沼 龍太郎 – 小日向文世

ちなみに、大きくはずした予想は以下の3点だ。

1)一番大きくはずしたのが、夫4人が理佐子の金沢殺害計画を幇助するという点だった。それは全く関係なかった。4人の妻を結婚式場に集めている間に、それぞれの4人の夫に、金沢殺害計画の準備をさせるっていう推理、なかなかだと自分で悦に入っていたけど、結局、まったく関係なかった。
それゆえ、その計画を前提とした動き(雄一が、理佐子と金沢との仲介をしたとか、秀典と賢治がその場に控えている、4人が理佐子に逆に脅されている等)に関しては、完全にはずしてしまった。

2)また8年前の事件をそもそも起したが雄一の画策だという推理もはずした。
そのクラブで外資系企業の幹部に接待された現場をフリー記者に見られ、その記事をもみ消すための資金として、偶発的に起きた事件の示談金を充てようというアイディアを雄一を出したというだけだった。
しかし、これは前回まで全くその記者の話など出てきていないのでしかたないと思うのですが...

3)4組の夫婦が全て離婚すると予想したが、真由子とたまきの2組のみが離婚、貴子とひとみ夫婦は元の鞘におさまった。元に戻った2組には、子供がいたというのが大きな分かれ目だったのだろう。

ただ、若干、疑問、強引さとして残された点もあったので、最後に触れておきたい。

以下の11点だ。

1)前回の放送時に教会の影に立って、石を並べていた帽子の男は誰だったのだろうか
警察があの現場を認識したのは雄一の垂れ込みによってなので、時系列的に、理佐子が教会に入ったタイミングでは早すぎる。したがって、警察の人ではない。
秀典はあの現場に来ていたし、賢治も家を外出するシーンがあったのでその2人のどちらかとも思ったが、不明。
結局あの伏線は回収されず。

2)久木田が貴子に近づいた理由の説得力が弱い
一時、久木田は、理佐子から自分への別れのメールを偽装したり、2人きりで何度も会うなど、明らかに貴子を誘惑しようとしていた。
しかし、それが、ただ、理佐子と会うための手段だったというのは無理があるように思えた。
もっと、別の深い意図があるのかと思ってしまった。それに関して、公式HPのキャスト説明の久木田の欄には「日本人で初めてニューヨークフィルと契約し、脚光をあびるが、その経歴ははっきりと公表されていない。」とあったので、彼に、もっと秘密があるのではないかと勘ぐってしまったのである。

3)理佐子の「私は勝ったわ」というセリフの根拠が薄い
結局、他の4人がいろいろと家庭や旦那に対して、愚痴を言っていて、愛情が薄れているのに対して、理佐子の久木田に対する愛情の方がピュアという事で「勝った」と言ったという事になっているが、4人の生活愚痴を聞いたのは、結婚式の後の、2次会の居酒屋での話なので、時系列的におかしいのではないか。

4)理佐子がアリバイを作るために4人を結婚式に呼んだという無理
4人にナンパをさせるゲームを仕掛けている間に、金沢を殺そうとしたという理佐子のアリバイ工作には無理があるのではないか。
何故なら、その時間には別々に行動しているわけであり、逆に殺人のタイミングには誰も理佐子と一緒に居たわけではないからである。

5)金沢とラブホに入るときに、理佐子が貴子に見せた視線は何だったのか
あのシーン、確かに、理佐子は貴子にこれ見よがしの視線を投げかけている。
あれは何だったのだろうか。

6)雄一が、何故、金沢が理佐子を恐喝していたのかを知っていたのか
結局、雄一の警察への垂れ込みが、逮捕に大いに役立ったのだが、金沢が理佐子を恐喝していた事を何故、雄一は知っていたのだろうか。
金沢が雄一にその事を話していたとしたら、それは何故なのか?その理由が無いような気がする。

7)勝沼の奥さんは死んだの?失踪したの?
以前、勝沼は、奥さんに逃げられたと話していたが、最終回では、奥さんに死なれたという話になっていた。この食い違いが疑問として残る。

8)理佐子が金沢を殺さなかった理由の説得力が無い
理佐子の話によると、結婚式の2次会の気の置けない雰囲気が気に入り、またそこに戻ってきたかった。
つまり、4人の友達としてその中に入りたかったという事であるが、その時点では4人はまだ初対面で、決して仲の良い状態ではなかったはずだ。
理佐子がそれを見て、殺人を思いとどまったというには説得力が薄いのではないか。

9)一度、理佐子が高柳家にやってきたがあれは何だったのか
第6話に、理佐子が高柳家にやってきて、家の前にいたところを娘に見られている。
あの行動は何を意味していたのだろうか。何を求めてやってきたのか不明のままである。
また、その際、秀典に会い、「女だったら誰でもこうなる可能性がある」と叫ぶが、そうだろうか。理佐子だけの問題のような気がするが。

10)公式HPの人物相関図を見ると、秀典の愛人として、会社の女の子が出てくるが...
公式HPの人物相関図を見ると、秀典の愛人として、会社の女の子が出てくるが、あの子、最終前回で、彼女はただのアシスタントだったと秀典は貴子に言う。
これは、秀典が、あんな緊迫した場面でも、またウソをついたのか。疑問として残る。

11)最終前回に、秀典が貴子に警察へ行けと言った際に、久木田がどんな男かお前は知らないと言っていたが...
最終前回に、秀典が貴子に警察へ行けと言った際に、久木田がどんな男かお前は知らないと言っていた。
それによって、久木田のさらなる秘密が出てくるかと思っていたが、それは全く無かった。
あの秀典のセリフの根拠は、そして、「どんな男」だと思っていたのだろうかが、不明。

まぁ、最終前回まで、かなりの謎を残しての最終回だったため、若干の破綻はしかたがないと思っていた。
結果として、毎回楽しませてもらったので、僕としては満足な「SCANDAL」であった。
そしておそらく、今後、この「SCANDAL」のような、豪華キャストによる複雑なサスペンスがブームにすらなるような気がする。
あまりに話が、複雑だと、一度落ちた視聴率を上げるのが難しいという懸念もあったが、、最終回には15.5%を回復していた。
最近の常套手段=視聴率回復のための夕方の再放送もしなかったのに。

ちなみに、日曜劇場のスポンサーは、トヨタ、NTTdocomo、花王、アサヒビール、アサヒ飲料だ。広告界の上客5社をバックに背負った今回のドラマ、TBSにとっては、ほっと胸をなでおろす数字がとれたのではないか。

まさむね

「イノラブ」「篤姫」「流星の絆」からの共通メッセージとは?

Saturday, December 20th, 2008


9月のリーマンショック以来、金融恐慌が徐々に実物経済の不況に伝染してきている。
トヨタ、ホンダ、キャノンなどで派遣社員の契約解除、ソニーの大型リストラの話が世間を騒がせている。
大変なことだ。
おそらく、来年あたりさらに、失業者は増えていくのだろう。

心配なのは、それにつれて、自殺者の数も増加しそうということだ。
左表を見ると、悲しいほど、失業者数と自殺者数に相関関係にある。厳しい現実だ。

自殺の動機に関して、一番多いのは健康問題、次に経済問題だと言われているが、そういう問題を抱えていても多くの人は頑張って生きている。
おそらく、自殺するという事は、結局は、将来の向かって何の希望もなくなったということ、人間関係を断ち切りたくなったということである。
最終的には、人と人との結びつきしか、その増加を食い止める手段はないのだろう。
      ◆
さて、そんな現況の中、最近のドラマでも、自殺を阻止するような場面が多く見られる。
死のうとする人に対して、「死なないでくれ」というメッセージを積極的に出すことは、社会として重要な課題であるという認識が共有されているということか。

例えば、「イノセント・ラブ」において、佳音(堀北真希)の兄・耀司(福士誠治)がナイフで自殺しようとするが、殉也(北川悠仁)に制止される。
その時のセリフが「生きていて欲しい」だった。
そして最終回に耀司は言う。「何があっても生きなくてはいけないのですね。」と。
大河ドラマ「篤姫」でも、主人公の篤姫(宮崎あおい)は、自分は死んで官軍の江戸総攻撃を回避しようとする徳川慶喜(平岳太)に対して、「あなたも家族です。」と言って、自害を阻止する。
また、「流星の絆」、真犯人だった刑事(三浦友和)が自殺しようとするが、自分の両親を殺された有明功一(二宮和也)はそれを許さない。
原作では、この場面で刑事は自殺する事になっていたらしい。
ドラマ化する際に、殺させるのを良しとしなかったことがうかがえる。
そして、そのシーンに、敢えて「生きろ」というメッセージを込めたのだと思われる。

3作品とも、少なからず憎んでいた相手に対してのメッセージだったことは共通している。
      ◆
一方、冷静な目で見れば、こういった不況の時期は新しい才能が芽生える時期でもあることも事実である。
右表は、自殺者数の増加を年毎に表したグラフであるが、1998年に急激に伸びているのがわかる。
そして、1998年に年間3万人台に上がった自殺者数はその後、高値安定の状態になってしまっている。

1998年と言えば、前年の1997年に、山一證券、北海道拓殖銀等が破綻。
この年には、バブル以降最悪の不況だった年である。

しかし、同時にこの年、宇多田ヒカル、浜崎あゆみ、モーニング娘。、aiko、MISIA、椎名林檎、キロロ等、その後の大活躍する女性ミュージシャン達が次々にデビューしている。
おそらく、こういう時期だからこそ、人々の新しい心情、感情、人情を汲み取れるような新しい感性が登場するチャンスなのだとも言えるのかも知れないのだ。

不謹慎かもしれないが、そういう意味で、来年の音楽シーンは大変楽しみである。

まさむね

「篤姫」ヒットの一因に、普遍的な物語性があった

Friday, December 19th, 2008

篤姫は、物語のアーキタイプ(典型)としても、優れているのではないかと思う。
アーキタイプというのは、典型的な物語の枠組みの事である(ここではそう使っている)。
例えば、世阿弥の「忠度」とか、「忠臣蔵」「水戸黄門」、西洋だと「シンデレラ」や「ロミオとジュリエット」がこれにあたる。
ようするに、それを典型として、いくつものバリエーションが生み出せるような普遍的な物語のことである。

では、篤姫は典型としてまとめるとするならば、どんな物語なのであろうか。

自由奔放に育った子が、心ならずも運命的に別世界に送り込まれてしまう。
そこには自分を苛めてくる数々の敵がいるが、その敵を一つづつ、自分の味方にしていく。
そして、その世界で、王子様と出会って、愛し合うことができるが、不幸にもその王子様は死んでしまう。
その王子様からのメッセージを心に秘め、さらに襲ってくる数々の敵を自分の味方にしつつ、難関を乗り切っていく。
その敵の中には、子供の頃に一緒に遊んだ仲間もいるが、それぞれの立場で最良の道を選んで進んでいく。
運命のしたがって、その別世界は崩壊してしまうが、その子は、最終的に、闘いの過程で味方にした仲間達と幸せに暮らす。

こんな感じだろうか。
篤姫では、この別世界は江戸城大奥だったが、それは老舗の旅館だったり、銀座のクラブだったり、大手町の大企業だったり、嫁入り先だったり、どんな設定でも物語は成立するような気がする。
それはバリエーションの問題なのだ。

今回、篤姫の大ヒットの原因の一つに、この物語の普遍性というのが追加できるかもしれない。
今後、このアーキタイプを活用したアドベンチャーゲーム、別のドラマ、小説などが多産されていくような気もする。

以下関連エントリー
篤姫が私達にくれた6つのメッセージ
大河ドラマ「篤姫」の視聴率がよかった11の理由
「イノラブ」「篤姫」「流星の絆」からの共通メッセージとは?

まさむね

篤姫が私達にくれた6つのメッセージ

Friday, December 19th, 2008

前エントリーで、大河ドラマ「篤姫」の視聴率がよかった11の理由を書いたが、今回は、その篤姫からの6つのメッセージを書いてみたい。
やはり、どんなジャンルでもそうだが、ヒットするコンテンツには、ユーザーに対する実践的なメッセージ(処世訓)が含まれているものだ。

篤姫という作品が、僕たちに送ってきたメッセージを以下の6つにまとめてみた。
 
 
 
1)迷ったら、自分の信じた道を行け
これは、父・島津忠剛(長塚京三)、義父・島津斉彬(高橋英樹)、母・お幸(樋口可南子)、夫・家定(堺雅人)達が、手紙や幻影の中で繰り返し、篤姫に伝えるメッセージである。
最終的に信じれるのは自分の感性であるというメッセージである。

2)自分の家族(身内)を大事にしろ
家定の幻影に言われることであるが、守らなければならないのは、財産でも、家でもなく、本寿院(高畑淳子)、滝山(稲森いずみ)等の「家族」(信頼できる仲間)である。そしてその心である。

3)運命に逆らわず、自分の役割貫け
これは「女の一本道」という表現があったが、薩摩の今和泉島津家の置く女中・菊本(佐々木すみ江)や、父・島津斉彬から伝えられる。

4)相手に対しては、自分をさらけ出せ
英姫(余貴美子)、島津斉興(長門裕之)、徳川斉昭(江守徹)、井伊直弼(中村梅雀)、和宮(堀北真希)等との確執をすべて、直談判で乗り切る。

5)生理的に合わない人にも優しくしろ
徳川慶喜(平岳大)に対しては、生理的にあわなかったが、そんな慶喜に対してもプライドを重んじて接し、生き場所を与えてあげる。

6)友人は、分け隔てなくつきあえ
上級武士の子であった篤姫であるが、薩摩時代に下級武士の西郷や大久保、有馬などとも等しく付き合う。後にその人間関係が生きてくるのだ。

以下、関連エントリー
大河ドラマ「篤姫」の視聴率がよかった11の理由
「篤姫」ヒットの一因に、普遍的な物語性があった
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まさむね

大河ドラマ「篤姫」の視聴率がよかった11の理由

Thursday, December 18th, 2008

NHK大河ドラマ「篤姫」が高視聴率で全50話終了した。
平均視聴率は、24.5%で、ここ最近10年の大河では最高を記録したという。それによって、某視聴率稼タレントKさんが再来年の出演を尻込み、辞退し、結局、福山雅治に決定したとの噂話にもリアリティがある。
また、2008年のヒット商品番付では、関脇に選出された。
全体的にNHKの番組が支持されたこの1年であったが、その代表選手がこの「篤姫」だったのだ。
それは何故なのだろうか。

ヒットの理由を僕なりに考えてみた。

1)主演・宮崎あおいの魅力
宮崎あおいは、天璋院・篤姫の生涯のうち、12歳~49歳までを演じた。
彼女は、子役としてデビュー後、映画「NANA」等で好演し、評価を徐々に上げ、史上最年少で大河の主役に抜擢される。
史上最年少(22歳1ヶ月)の主役として、放映開始前から話題になった。
実際、スタジオで台本を持っているところはほとんど見られなかったというほど、完璧な役作りで、彼女自身が本当の篤姫になったかのごとく、を見事演じきった。
実際、江戸城開城を前にして、一千人の女中に大奥明け渡しを伝えるシーン撮影の前夜はソワソワしてしまったという。それほど、役にのめり込んでいたという事だ。

2)幕末という大変革の時代と現代とがシンクロ
現代は100年に一度の大変革の時代と言われている。多くの日本人はそんな激流の中、将来への不安を心に抱いている。
そんな現代という時代状況が、篤姫が生きた幕末と酷似していると言われている。
特に、徳川幕府の大奥という、あの時期、衰退を余儀なくされた既得権益集団をどう、終わらせていくかという、一見地味だけど、物凄く困難な状況を乗り切った篤姫の人間性、判断力、説得力が、これから退潮を余儀なくされるであろう現代社会を生きる、多くの日本人の共感を呼ぶところだったのではないか。
現代に蔓延する閉塞感を切り開くためにはどうしたらいいのか。視聴者一人一人が、こういった疑問の答えを模索する中で、篤姫に惹かれたのではないかと思う。

3)周りの男性が草食系
篤姫が子供の頃から男勝りで積極的な少女として成長したが、彼女を取り巻く男達は、それに比べて情けない性格で、最近よく言われる草食系男子として描かれていた。
積極的に女性を求め、ギラギラした人物はあまり、出てこないのだ。
草食系男優の代表格・瑛太が小松帯刀を、ひょうひょうとした性格俳優の堺雅人が徳川家定を演じた。
瑛太は、尚五郎の情けない青年時代から、時代を動かすほどの傑物・帯刀への成長を上手く演じた。
篤姫と再会すると、以前の尚五郎に戻って伏し目がちになるところ等、出色だ。
また、他の人々の前では”うつけ”のフリをしているのだが、篤姫との寝室だけ、本来の聡明さを見せる家定は魅力的だ。
第48回放送時に、幻影として復活した家定が再び”あの世”に帰ろうとする時に、一瞬、篤姫がついて行こうとするシーンは、大河史上でも名場面として今後も語り継がれるだろう。
さらに、松田翔太も、若いながら気品と思いやりのある名君・次代将軍の家茂をよく演じていた。

4)大奥バトルという見せ場
フジテレビのドラマ「大奥」等によって、江戸時代の大奥で繰り広げる女の戦いが、見せ場として認知されてたという背景がある。
今回の場合、大奥だけにとどまらず、篤姫の教育係の幾島(松坂慶子)との確執、島津斉彬の妻の英姫(余貴美子)との確執、家定の母・本寿院(高畑淳子)との確執、大奥総取締りの滝山(稲森いずみ)との確執、そして皇女和宮(堀北真希)との確執等、様々な闘いを持ち前の明るさで乗り切るシーンはそれぞれ見せ場を作った。しかも、それぞれのシーンは上品さ(例えば、和宮の堀北真希)、ユーモア(例えば、本寿院の高畑淳子)、適度な嫌味(例えば、庭田の中村メイ子)によって、陰湿な感じを抱かせなかったのがよかったと思う。
こうしたシーンは、普段、女同士の闘いに疲れている現代のOL達、主婦達に支持されたのではないか。

5)衣装美術等のアイテムが本物志向
他局での大奥物の衣装が、金柄の布で派手さをアピールしているのに対し、今回の大河ではあくまで史実に忠実であろうと、柄よりもむしろ生地に本物らしさを感じさせた。
また、手元の小道具や、駕籠などの大道具、大奥の庭、建物などもリアリティがあった。
惜しむらくは、西郷の家紋が蛤門の変の時点で抱き菊になっていた点、水戸家の家紋が徳川宗家と同じだった点など、家紋に関する考証はいまひとつだった。

6)篤姫のシンデレラ結婚、上流生活への憧れ
今年の流行語のひとつに婚活というのがあった。
最近の女性(男性も)は積極的に結婚のための活動をしなければならない時代になったという事だ。
そのように、ある意味厳しい時代を生きざるを得ない結婚願望のある女性達にとって、許婚制度、篤姫の玉の輿婚は憧れであろう。
また、(様々な苦労はあるのだろうが、)篤姫に登場する江戸城大奥での上流階級の生活も庶民にとっては、垣間見てみたい世界なのである。

7)幕末のキャラは一応おさえる
篤姫の時代は、歴史ファンの間にも人気のある時代だ。
特に坂本龍馬、西郷隆盛、勝海舟等は人気があるが、「篤姫」では彼らを上手に話の中に取り込んでいた。
しかも、幕府側からみた幕末、という今まであまりなかった視点は新鮮を感じさせ、歴史ファンを喜ばせてくれたのではないか。
また、西郷と大久保の二人の関係を、それぞれの不遇の時期、活躍の時期の表情を、原田泰造、小澤征悦の二人がよく表現していた。

8)ドラマ全体から伝わってくるメッセージが現代的
篤姫が様々な試練を前にして、決断を迫られる時、義父・島津斉彬(高橋英樹)、実母・お幸(樋口可南子)、家定(堺雅人)からのメッセージを思い出す。
それらは、最終的には「己の信じた道を進みなさい」という価値に集約される。
江戸時代の武家の女がこのような価値観を持っていたかどうかの歴史考証は置いておくとして、行動原理が自分の外のどこか(宗教、慣習、学問等)にあるのではなく、自分の中の素直な気持ちにあるという価値観は、いわゆる戦後民主主義の価値観と通底している。
現代人に自然に入っていったのではないか。
また、「最終的に家族を大事に」というメッセージもあったが、その大事にするものは、血のつながりではなく、財産でもなく、(徳川の)心なのである。
それではその心とはさらに具体的に言えば何なのかという点は深くは掘り下げられてはいないが、逆に具体的でないがゆえに多くの視聴者の心に響いたのではないか。

9)歴史上での篤姫の失敗を上手くカバー
実は、この作品が世に出るまで、天璋院は不幸な女性と言われていた。
政略結婚で大奥に入るが、夫の家定はすぐに亡くなってしまう。息子の家茂も夭逝してしまう。
そして、和宮との確執。大奥明け渡し、明治に入ってからは旧女中達の面倒を見るなど、苦労に苦労を重ねた人生のように言われていた。
特に明治時代以降は、時代背景もあって、和宮と対立した天璋院の評価は低かったのだ。
しかし、今回のドラマではそういったネガティブな天璋院像はなかった。
むしろ、前向きで明るい人生であるように表現されていた。この演出力は素晴らしい。
また、一橋派の策略(慶喜擁立)に失敗。徳川幕府存続にも失敗している。ただ、その失敗はドラマの中では、”大事なのは、権力の保持でも城に居座る事でもない。家の心を残すことだ”という価値観によって、見事に、自然に正当化されて表現されていた。あまり不自然には感じられなかったのである。

10)ボーイッシュな女性が活躍する現代という時代背景
最近の芸能界で活躍している女性を見てみると、一様にボーイッシュな女の子が人気となっている。
以前(10年位前)、イエローキャブの女の子全員にインタビューするという機会があったが、その際、小池栄子、MEGUMI、佐藤江梨子、根本はるみ等、その後、活躍する女の子達はみんな子供の頃の遊び相手は男の子だったと言っていた。逆に見た目は魅力的だが、性格が女っぽい娘は、全員、その後大成しなかった。
また、最近、低調なハロプロだが、その中でもボーイッシュな里田まいと矢口真里が現在でもテレビ芸能界で活躍しているという現象も興味深い。
おそらく、現代は、男ウケする女性よりも、ボーイッシュな女性の方がテレビウケするような時代なのではないか。
篤姫が子供の頃から男の子と遊ぶのが好きだったというエピソードは篤姫人気の一つの隠し味だったような気もする。

11)オヤジ殺しとしての篤姫
高視聴率だったということは、中高年の人々にも広く受け入れられたという事である。
篤姫の、どんどん積極的にオジさんの胸に飛び込んでいく性格は、それらの中高年の人々にも好感を持たれたのではないか。
例えば、調所広郷(平幹二朗)、島津斉興(長門裕之)、徳川斉昭(江守徹)、井伊直弼(中村梅雀)、阿部正弘(草刈正雄)、勝海舟(北大路欣也)等、一癖も二癖もあるオヤジ連中に対して、ひるまず、正面から自分をさらけ出す事によって、最終的にコロッといかせているのだ。
オヤジあしらいの天才としての篤姫という側面も視聴率アップに貢献したのではないか。

以上、勝手に推測させていただいた。
みなさんもそれぞれ考えてみてください。

以下、関連エントリー
「篤姫」ヒットの一因に、普遍的な物語性があった
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篤姫が私達にくれた6つのメッセージ

まさむね

「イノセント・ラヴ」最終前回における10の奇行

Tuesday, December 16th, 2008

イノセントラブの9回目放送の平均視聴率が出た。
最終回一回を残しての、14.5%だ。
月9ドラマとして、この数字が及第点だとは思えないが、それまでの数字の動きから見れば、盛り上がってきたとは言えるだろう。

1回目放送 16.9%
2回目放送 13.3%
3回目放送 13.1%
4回目放送 11.7%
5回目放送 11.7%
6回目放送 12.6%
7回目放送 13.4%
8回目放送 12.8%
9回目放送 14.5%

今まで、聖花(内田有紀)の突然の、植物人間からの突然の起き上がりや奇行など、すなわち彼女の唐突演技に支えられて、6回目放送以降、徐々に上げてきた視聴率も、聖花が、9回目放送の最後の方ではついに立ち上がり、殉也(北川悠仁)と佳音(堀北真希)の結婚式会場に向かうという、これ以上無いようなあり得ない展開に。視聴率的に大いに貢献した。
さらに、この回は、その他に、佳音の兄・耀司(福士誠治)による殉也にナイフでの切りかかり、美月(香椎由宇)の殉也や聖花に対するイジメ、殉也と佳音のキス、佳音の花嫁衣裳姿など、”単品”でも魅力的なシーンの連続で、この14.5%という数字を無理やり確保したという感じだろうか。
しかし、シーン&シーンをそれぞれにキャラ立ちさせるために、ストーリーが破綻してくるというのは、いかがなものか。最終的に俳優自身の魅力で引っ張れなかったシワ寄せがこういった展開を生み出してしまったのである。そこが今回の「イノセントラブ」と前作「ラストフレンズ」の大きな違いだと思われる。

しかし、元々、このドラマは、登場人物の奇行(覗き見、勝手な家への上がりこみ、盗み撮影等)の連続だったことは確かで、恋愛ドラマというよりも、ホラーあるいはSFとして見るべきだと思っていたが、9回目放送回も、登場人物の心の動きの不自然さがどんどん出てきた。登場人物の心情よりもシーンの奇抜さに心を奪われていかざるを得ない展開だ。

それらを以下にまとめてみよう。

◆1◆佳音を追って、長野までやってきた殉也。佳音のアパートにやってくるが、佳音に拒絶され、アパートの近くから昼夜離れない。「僕はいつまでも待っている」と言えば、聞こえはいいが、傍から見ればただのストーカーだ。

◆2◆部屋の外で、賛美歌のオルゴールを聴かされ、説得されて、殉也を部屋に導きいれる佳音。意志が弱すぎる。

◆3◆出所した耀司が、夜にそのアパートへやってくる。何故かドアの鍵が開いている。部屋では2人で一つの毛布に包まり就寝。あまりにも無用心だ。

◆4◆耀司が殉也にナイフで襲い掛かる。それを止めようとする佳音。結局これは耀司による佳音の(両親を殺したのは彼女ではなく、耀司だったという)記憶を呼び起こそうとした狂言だった。耀司は、心理学者か。この行動によって佳音の記憶が戻るということが、何故解ったのか。それにしてもリスクの高すぎる行動だ。

◆5◆その後、耀司がナイフで自殺を図るが、殉也に阻止され、泣き崩れる。殉也曰く「生きていて欲しいんだ」って、心広すぎ。

◆6◆とりあえず、殺したのは自分ではないという記憶をよみがえらせた佳音。一応、自分が幸せになってもいいんだという免罪符を受け取る恰好に。でも、殺そうとしたことは確かなんだから、最後に刺したのが耀司だからって、自分は救われるの?という疑問が残る。

◆7◆横浜に帰り、佳音にプロポーズする殉也。聖花を死ぬほど好きだったのではないか。この心変わりは早すぎるとの指摘も。

◆8◆勿論、佳音はOKする。「殉也さんの笑顔を近くで見たい」という事で近くにいたのではないか。それまで、潜在的に存在した下心が露呈した恰好に。

◆9◆そして結婚式。自分が振った美月(香椎由宇)がいる教会での結婚式。美月への配慮はまるで無し。

◆10◆殉也の写真を見て、彼を思い出した聖花。招待状の住所を見て、その式場に歩いて向かう。彼女の頭の中はどうなっているのか。住所が解るのか?いきなり立ってそこまで歩けるのか?等の不条理の謎が残る。

来週の予告Vによれば、その聖花が教会の上から身を投げ、受け止めようとした殉也が下敷きになり頭から血を流すというわけのわからないシーンが見られた。また、昴(成宮寛貴)の殉也に対する同性愛、耀司の佳音に対する近親愛等がまだ未処理だ。どうなるのか。

脚本担当・浅野妙子の前作「ラスト・フレンズ」のように、誰か死んで遺児を、残り人々が育てるというパターンになるのか。
そうだとしたら、死ぬ(あるいは植物人間になる)のは殉也で、彼の子を宿した佳音が兄・耀司と一緒にその子を育てるのか。兄の気持ちを考えるとそれも無理がある。
あるいは佳音が死んで、殉也と耀司が一緒に...というのももっとあり得ないか。

しかし、いずれにしても、登場人物の行動の唐突さでは他の追随を許さないこのドラマだけに何があるかわからない。
というわけで、来週の最終回もなんだかんだ言って、テレビの前に釘付けにされる僕であった。

まさむね

「スキャンダル」最終回を残して推理してみました

Monday, December 15th, 2008

最終回一回を残して、「スキャンダル」は佳境に入ってきた。
 
しかし、それにも関わらず、いまだ全体像が見えてこない。
 
今回の最後の推理だが、我ながらかなり苦しいと思われるが、精一杯考えてみたので、宜しければ一読お願いします。

 
キャスト

高柳 貴子 – 鈴木京香
高柳 秀典 – 沢村一樹

河合 ひとみ – 長谷川京子
河合 雄一 – 光石研

鮫島 真由子 – 吹石一恵
鮫島 賢治 – 遠藤憲一

新藤 たまき – 桃井かおり
新藤 哲夫 – 石原良純

白石 理佐子 – 戸田菜穂
久木田 慶介 – 加藤虎ノ介

川島 礼二 – 植田浩望
水谷 隼人 – 細田よしひこ
勝沼 龍太郎 – 小日向文世
  ◆
まず、8年前のクラブでの久木田による金沢傷害事件の真相だ。
おそらく、この事件は、雄一の画策により、久木田が金沢に対して傷害事件を起こさせるように仕向けた事件だった。
まず、金沢と雄一が、クラブで、暴言を吐き、久木田を怒らせる。
その流れの中で、久木田が傷害事件を起す。
そして、示談交渉になる。
理佐子は、かつての上司・新藤たまきから、夫の弁護士・哲夫を紹介されるが、哲夫の能力がなかったため、示談金=1000万円を支払うことになる。

理佐子は、その後、秀典、賢治とのお付き合いを継続し、示談金の一部を彼らに借金する。
必死に返済する理佐子だが、金沢は、さらに金をゆすろうとする。さらに、理佐子の体を要求する金沢。
そして、さらに雄一は、金沢と理佐子の仲介役をさせられる。
しかし、その間、理佐子と雄一にも関係が出来る。
罪悪感はあれど、どうしようも出来なかった。これで、雄一は理佐子の言いなり状態となる。
  ◆
さて、結婚式間近になり、理佐子は金沢と手を切るための手切れ金として、秀典、賢治に借金を申し込むが二人に断られる。
おそらく、この時、「お互いの浮気関係を貴子と真由子にばらすぞ」などと、理佐子から逆に脅されていたのではないか。
その後、二人は理佐子の言いなりに近い状態に立たされる。

そして、結婚式当日。妻4人は結婚式に出席しているので夫の行動が確認できない状況で、理佐子の計画が実行に移された。

まず、雄一は、理佐子から金沢を六本木に呼び出すように指示される。
また、秀典と賢治は、殺人現場に近くに待機させられる。
理佐子に「金沢と手切れ交渉するが、もしも、自分が危なくなったら助けて欲しいので近くにいて欲しい」などといわれていた可能性がある。
さらに、理佐子は、哲夫に対しては、たまきを出迎えるために、六本木まで出て来させる。殺人直後のタイミングで、現場から理佐子をピックアップさせるようにしたのだ。

そして、理佐子は、金沢をラブホテルに連れ込み、そこで、金沢を殺害しようとする。
しかし、理佐子の殺害計画は失敗する。ナイフで金沢の足をさすが、致命傷には至らせることはできなかった。

そして、その状態で理佐子がその場から突然、失踪する。
  ◆
実は、理佐子は、久木田との結婚はあきらめていた可能性がある。
この殺人を犯す事によって、理佐子は、金沢との関係を清算する。
そして、それと同時に、理佐子は、過去に汚れた自分との縁も切ってもらい、久木田には国際ピアニストとして新たな人生を送ってほしいと願っているのではないだろうか。
  ◆
現場に残された雄一、秀典も呆然とするが、すぐにその場から逃げる。
そして、理佐子は哲夫に発見されて、新藤家へ。亡くなった駿介の部屋に入るのだ。

これはあくまでも、理佐子個人の計画だが、逮捕されたとしても、彼女の証言によっては、雄一、秀典、賢治、哲夫の4人は怪しい立場に立たされるのだ。
共犯ということにならなくても、少なくとも理佐子との関係がそれぞれの妻にばれてしまうのだ。

これで、4人の平和な結婚生活が壊れることになる。
これが、理佐子が初回の結婚式の時に、「私は勝ったわ」と言った理由ではないのか。

上記の計画が実行されれば、理佐子にとっては、自分は純愛を全うし、他の4人は偽りの結婚生活をしていたという事実をつきつけることが出来るからだ。
  ◆
次回の予告によると、理佐子は殺人計画の容疑で拘留。
そして、4人の妻は、理佐子逃亡の幇助の容疑で別に拘留となるようだ。
  ◆
しかし、すぐに4人は釈放されるだろう。そして、それぞれの結婚生活にどう、決着をつけるのだろうか。
4組とも、離婚、4人の妻は新たな生活に向かって、お互い励ましあいながら、前向きに生きようと決心する。という終わりがスッキリするように思えるが、果たしてどうなるであろうか。

まさむね

似すぎてないか「イノセント・ラヴ」と「ラスト・フレンズ」

Tuesday, December 9th, 2008

「イノセント・ラヴ」の展開が、ますます「ラストフレンズ」に近づいてきているように思う。
勿論、両方とも、浅野妙子脚本、スタッフも同じというから、同じような色合いのドラマになるということは予想されていたことだが、登場人物達の苦悩の種類まで似ているのだ。

例えば、「ラストフレンズ」の瑠可(上野樹里)は、性同一障害を自分の中に抱え込み苦悩するが、「イノセント・ラヴ」の昴(成宮寛貴)は殉也への同性愛という感情を抱えている。
おそらく、次の展開としては、昴の、殉也(北川悠仁)への想いが、や殉也本人、あるいは聖花(内田有紀)にバレることによる新たな苦悩発生の可能性が高い。

また、「ラストフレンズ」のタケル(瑛太)は姉からの性的虐待を受け、そのトラウマにより、女性恐怖症に苦しむが、「イノセント・ラヴ」の佳音(堀北真希)も父親からの性的虐待を受けていた。
さらに、その虐待に対して、彼女はついにナイフを持ち出し、父親を刺殺するが、その現実を受け入れる事が出来ない彼女はその事実を無意識的に意識から排除、いわゆるPTSD状態なのである。
そして、彼女の兄・耀司(福士誠治)は、その事実を隠蔽するために自分が罪を背負い、家に火をつけるという過去を持ってる。しかも、耀司自身も妹の佳音に対して近親相姦的な恋愛感情を抱いているのである。

さらに「ラストフレンズ」の美知留(長澤まさみ)とその恋人の宗佑(錦戸亮)は、小さい頃からネグレクト状態で育てられるという生育環境のため、宗佑は美知留にたいしてDVを行ってしまう。
また、逆に美知留も宗佑からのDVに対して無意識的な依存関係に陥っている。

心の傷という意味では、本日の放映された「イノセント・ラヴ」の第8話でも、殉也が深い失恋状態から常軌を失う。
婚約者の聖花のために、献身的に尽くしてきた殉也だが、彼女の愛が殉也にはなかったという現実を思い知らされ、呆然としてしまうのだ。

ようするに2つのドラマとも、登場人物達は、それぞれの心と闘わなければならない状態なのだ。
それゆえに、彼ら、彼女らは、一様に暗い。
また、だからこそ、一様に優しく思いやりがある。
さらに、現実世界における、いわゆる欲望に関して希薄である。
それは勿論、性的関係においてもそうだ。「イノセント・ラヴ」では殉也は佳音との間にSEXを匂わすものは一切無いのだ。

浅野妙子ドラマが現代人に受けているとすれば、おそらく、内面的苦悩を抱えた若者、あるいはそれに共感出来る人々が確実に増えているという事ではないだろうか。
それは、同時に、心の闘いを乗り越えるために、他者からの絶対的承認、すなわち愛が必要なのだということを切実に感じている人々も増えているという事だと思われる。

日本の恋愛史について特に詳しいわけではないが、多くの日本人にとって、恋愛というものは長らく、結婚のための通過点であった。
というよりも、おそらく恋愛経験をする以前に、人々は結婚したし、あるいは、性的な対象として相手を希求し、そしてそれが実現するに及び、結婚に至るという流れだったと思う。

しかし、「イノセント・ラヴ」も「ラストフレンズ」も、登場人物達の関係の先に結婚という道筋が強く見えてこない。
それが、現代的といえば、確かにそうかもしれない。
ここ数年、いわゆる”出来ちゃった結婚”が増加しているという事実もそれを裏付けている。
結婚というものが恋愛の結果ではなく、妊娠の結果としてしかないという事を意味しているからだ。

おそらく、このような若者のメンタリティが続くとするならば、少子化はますます進むであろう。
託児所を沢山作るということは、それはそれで大事なことではあるが、少子化対策の本質とはずれているようにも思える。
元、TVの番組ADだった小渕優子大臣。
お分かりかとも思うが、予算を使うことばかり考えないで、根本に立ち返り、これらの最近のドラマをご覧になられたらいかがだろうか。(余計なお世話か?)

さて最後に全く関係ないが、神父役の内藤剛のクレジットに特別出演とあるが、ほぼ毎回出演しているし、失礼だが、それほどの大物だろうか?
ちょっとした疑問でした。

まさむね

女の友情篇「スキャンダル」第8話を読み解く

Sunday, December 7th, 2008

TBS日曜劇場「スキャンダル」の第8話。
残念ながら、いわゆる”謎”の解明に関してはほとんど進展はなかった。

ひとつ明確になったのは、新藤たまき(桃井かおり)の子供・駿介が実は既に死んでいたということだ。
前回のエントリー、『第7話 急展開の「スキャンダル」を読み解く』で、僕は駿介はたまきの前の夫と一緒に出て行ったのではないかとの推理をしたのであるが、それはなかった。

ただ、この駿介の部屋には、彼が亡くなった当時と全く同じ状態で残されていた。
たまきは、駿介の死以降、この部屋を開けたことが無かったという。開けることによって、そこに駿介がいないという現実に耐えられなかったのだ。
そして、何年かぶりにその部屋に入ったたまき。
貴子(鈴木京香)、ひとみ(長谷川京子)、真由子(吹石一恵)も一緒にその部屋で、たまきと号泣する。
サスペンス物として見ていた視聴者の涙をも誘う名場面になった。勿論、僕も泣いた。

泣きはらした後、それによって、さらに友情の絆を深めた4人。
そこに、たまきの夫・哲夫(石原良純)が帰って来て、理佐子(戸田菜穂)からの手紙を渡す。
番組HPによると、そこには、「真実を知りたければ、日曜日に結婚式を挙げた教会に来て」とあったという。
4人はそこでどんな”真実”を目にするのだろうか。

さて、ここで再度、現時点での”謎”を整理してみよう。

★何故、理佐子の携帯電話を久木田が持っていたのか。
これは、少なくとも結婚式の前の時点では理佐子と久木田はグルになっていたことをあらわしているのではないか。
ただ、その後、理佐子がなんらかの理由で久木田のもとから離れていったのではないだろうか。
おそらく、それには、その結婚式の夜のラブホで傷害事件が関係しているのに違いない。
おそらく、理佐子は、あの晩、久木田とグルになって金沢を脅そうとしたのではないか。
あるいは、全く逆に、金沢が理佐子を脅迫。逆上した理佐子がナイフを手にして...という可能性もある。
そして、そこには、久木田の他に、哲夫、雄一、秀典(沢村一樹)も絡んでいた..がこれはまだまだ謎だ。

★理佐子が結婚式の前に賢治(遠藤憲一)、秀典に借金を依頼していた。
これは、何のための借金だったのか。金沢への手切れ金だったのか?

★貴子が理佐子の携帯に電話したとき、一度、男が出ている。
今考えてみると、これは哲夫の声だったのではないか。哲夫が理佐子を駿介の部屋に匿っていたということを考えれば、これはほぼ間違いない。
ということは、この時点で、久木田、理佐子、哲夫は元々、グルだったということになるのだろうか。
しかし、何故、哲夫が電話に出たのか?これはまだ謎である。

★久木田が何故、貴子にモーションを掛けつづけるのか?
これは、純粋に久木田の貴子に対する愛情と理解していいものなのか。おそらくそれは無いであろう。
あるいは、最終的には久木田が貴子から、金を引き出そうとしているのか。それも現時点では不明。
久木田が貴子に対して、理佐子からの「別れ」のメールを見せたというのも、久木田が貴子の気を惹くための自作自演だったのではないだろうか。
また、今回の放送で久木田がわざわざ、貴子の家に行くシーンがあるが、これは2人の関係を夫の秀典に見せることによって、秀典を疑心暗鬼にさせ、貴子と秀典を別れさせようとしているとしか考えられない。

★久木田がアメリカに行った様子が無い。。
根本的な疑問として、久木田は、実は国際ピアニストではないのではないか。別人なのを偽っている可能性というのもまだあると思われる。

★何故、理佐子は久木田の前から逃げなければならないのか
理佐子は久木田に対して、まだ秘密があるようである。
次回の放送で、理佐子は哲夫のもとからも逃げるということであるが、金沢、久木田、哲夫と逃げ続ける理佐子、次に行くのは、どこか?真由子の夫、賢治のところか?

★結婚式の晩、金沢と一緒にラブホに入るときの理佐子が貴子を見る表情(敢えて、貴子にその姿を見せつけようとしているような表情にも見えなくはない)
貴子の心を乱そうとしたのか。この表情の意味はいまだ不明。

冒頭にも述べたが、今回の放送は謎の解明に関して、ほとんど進展は無かった。
しかし、4組の夫婦の仲は確実に崩壊の方向に向かっている。

そこで初回の結婚式における理佐子の4人に対する「私は勝ったわ」というセリフに戻りたい。
理佐子は、今回の一連の騒動で4人の結婚生活を壊すことを、勝つと表現したのかもしれない。
そうすると、あの結婚式の晩に、理佐子がバーでナンパゲームを仕掛けたことも別の意味を帯びてくる。4人のアバンチュールの危険と甘さを味合わせようとしたという事になるからだ。

さて、4人は、現状の夫婦生活よりも、かけがえのない友情と、人生における新しいステージ、見せ掛けではない本当の愛をつかむのであろうか。
最終回の最終的な映像としては4人が幸せそうに並んで歩くシーンが思い浮かぶが、はたしてそうなるのか。
残り2回。まだまだ、予断を許さない。

まさむね

アラフォーの応援歌 『Love ~Winter Song~』(福原美穂)

Sunday, December 7th, 2008

TBS日曜劇場「スキャンダル」の主題歌、福原美穂の『Love ~Winter Song~』が素晴らしい。

ここ最近、青山テルマやEXILE等、どちらかといえばモノローグ的(ささやき系)の楽曲がヒットチャートの上位を占めていたが、久々に開放的なキャラクタの登場だ。

そういえば、数ヶ月前に「特ダネ」で小倉智昭さんが絶賛していたのを思い出す。
小倉さん曰く、とにかく格段の歌唱力で、ロサンゼルスの黒人教会で彼女がゴスペルを披露したとき、参列していた信者達が号泣したというエピソードがあるという。
日本人はとかく、本場におけるそういった伝説に弱いのだが、福原美穂の歌は、そういったギミック(売らんがための仕掛け)が不要なほど、魅力的に思える。

その歌詞のポジティブさは特筆ものだ。

世界中にありったけの花束と喜びを
あなたに出会えたこと 大事な宝物だよ
この手の中 溢れている小さな笑顔や涙
あなたの瞳(め)に映る未来を 祈っているよ

先週、「29歳のクリスマス」の再放送をしていたが、その主題歌『恋人達のクリスマス』は福原美穂が最初のテレビオーディションで披露したというが、思えば、1994年に放送されたこの山口智子、松下由樹のトレンディドラマの登場人物の世代がちょうど、今、いわゆるアラフォー世代と呼ばれている人たちだ。
おそらく、彼女達の明るさ、溌剌さは今年の流行語大賞に選ばれるほど、現代日本では突出した存在なのではないだろうか。

ちょうど、男女雇用機会均等法が施行された頃に就職した彼女達は、最も仕事(そして自分の人生)に対して、前向な世代と言われてきた。
彼女達は、今の20代の女の子達よりも、結婚後のキャリア継続願望、あるいは、自己実現願望が強いのだ。

この『Love ~Winter Song~』、「Around40〜注文の多いオンナたち〜」の主題歌『幸せのものさし』(竹内まりや)、そして『恋人達のクリスマス』も加えた3曲は、そんな彼女達の応援歌としてこれから年末・年始にかけて、カラオケ屋を賑わせてほしいものである。

まさむね