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「そばにいるね」は格差社会を正当化する

Wednesday, July 9th, 2008

2008年の上半期オリコンランキングで「そばにいるね」(青山テルマ feat.SoulJa)が1位となった。
遠距離恋愛を扱ったこの歌に漂う、ゆるい男女の関係のあり方が広く支持された結果だと思う。

どんなに離れていようと心の中ではいつでも一緒にいるけど 寂しいんだよ…

最近のドラマ、映画の恋愛においては、遠距離が勝利するという説(宮台真司氏とか)がある。

例えば映画「恋空」ではそういった恋愛の現代性が典型的に表現されているという。
そして、おそらくこの「そばにいるね」もそういった遠距離勝利の流れにある。

もっとも、この楽曲は、NTTドコモのキャンペーンソングに採用されていた。
それを考え合わせれば、「遠距離恋愛は勝利する」あるいは「遠距離恋愛こそ純粋である」という感性は定額制、割引制加入促進を背後からささえる思想になっているっていうのも明白だよね。
CMで流される口当たりのいい一般論(価値観)が、対象となっている商品を正当化する思想になっているということはマーケティングの常道である。
例えば、「かけがえのない今を大事にしよう(買えるものはカードで)」という一般論が、「とりあえず、今、金を使え!!」というカード会社の本音の、「人生、何があるか分からない(だから愛する人のために)」という一般論が、保険会社の「だから契約しなさい」という誘導を、それぞれ背後からささえる思想になっているのである。

しかし、「そばにいるね」の思想は、携帯電話会社用の思想である以上に、格差社会固定化する思想である事も付け加えなければなるまい。
定額料金の携帯電話の電話越しでやさしい言葉をささやきあう事が「最強の純愛」であるとするならば、そこからはお互いの現状打破しようとするエネルギーは生れてこない。
わざわざお金(車代、デート代、宿泊代等)や時間をかけて、会いに行く必要がなくなってしまうからだ。

俺がもっと金持ちだったら もっとまともな仕事をしてたら…
もしもすべて犠牲にできたのなら 俺は絶対に君を…

上記は「そばにいるね」の相聞歌「ここにいるよ」の中の男から女への一節であるが、男はロマンチックな言葉はささやけるが、忙しさにかまけて半永久的に現状に安住し続けてしまうのだ。
この2人の関係は「心の豊かさ」として感じるか、それとも「下流恋愛思想」として見てしまうかで、この曲への評価は大きく変るだろう。

最後に、5月に大川栄策さんが「そばにいてね」という曲をリリースしています。
大変、まぎらわしいのでCD購入の際は、気をつけてね。

まさむね