この紋の図柄を見ると、車紋というよりも車輪紋である。
言うまでもなく、車輪というのは乗り物を、そして乗り物に乗っている人を支えるものである。
車紋の使用氏として一番有名な一族は藤原秀郷流の佐藤氏であるが、一族の中で「人を支えた」人物と言えば、源義経に遣えた佐藤継信、忠信兄弟を思い出す。
また、車紋は別名、源氏車とも言われている。
また、源氏車といえば、「源氏物語」9帖の『葵』における六条御息所と葵上の車争いを連想させる。そして、その車争いで敗れた六条御息所の怨念が車に取り憑き、朧車という妖怪になったという伝説もある。左図は鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』より。
車紋の車輪はただの車輪ではない。様々な人々の思いがつまっているのだ。
◆
さて、この紋は全国ではそれほど、普及している紋ではない。ただ、東北地方では散見される。
特に、秋田県では18位だ。
これは秋田県で、佐藤姓が多い事と関係していると思われる。
また、東北地方以外では唯一三重県でベスト30位に入っている。これはこの地が伊勢神宮のお膝元だからか。
車紋を持つ有名人は以下。
佐藤継信。1158年? – 1185年3月22日、平安時代末期の武将で、源義経の家臣。
出身は奥州信夫郡(現在の福島市飯坂町)。佐藤忠信の兄。
義経が挙兵した源頼朝の陣に赴く際、藤原秀衡の命により弟・忠信と共に義経に随行し、平氏追討軍に加わったのち、屋島の戦いで討ち死にした。
写真は福島県福島市飯坂町の井王院にある墓所の門の写真。
榊原康政。1548年 – 1606年6月19日、武将・大名。
榊原氏は三河・伊勢・伊賀守護仁木義長の子孫である。
家康の家臣として姉川、三方ヶ原、長篠、小牧・長久手の戦いになど数々の戦いで戦功を立てた。上野国館林藩の初代藩主。徳川氏の家臣。康政流榊原家初代当主。
家紋は榊原源氏車。
中川清秀。1542年 – 1583年6月10日、戦国時代の武将。
はじめ摂津の豪族であった池田勝正に仕えた。清和源氏頼光流の多田源氏の後裔。
本能寺の変で信長が横死した後は羽柴秀吉につき、山崎の戦いで大いに活躍した。
賤ケ岳の戦いにも秀吉方先鋒二番手として参戦したが、戦死。
家紋は中川車(右)。中川柏(左)
榊原健吉。1830年12月19日 – 1894年9月11日、幕臣、剣客。
江戸麻布の広尾生まれ。父は御家人榊原益太郎友直、5人兄弟の長男。 名は友善。
男谷信友から直心影流男谷派剣術を継承した。
天覧兜割などで知られ、「最後の剣客」と呼ばれる。
家紋は榊原車。
林董。1850年4月11日 – 1913年7月20日、外交官、政治家。
下総国佐倉藩の蘭医佐藤泰然の子として生まれ、後に幕府御典医林洞海の養子となる。董三郎とも。変名、佐藤 東三郎。箱館戦争時には佐藤東三郎と名乗った。敗戦後、香川・兵庫の県知事、ロシア・イギリスの駐在公使、外務大臣、逓信大臣などを務めた。在英日本公使としてロンドンで日英同盟を調印した。
野中到。1867年 – 1955年2月28日、気象学者。
福岡に生まれる。母方の従妹である福岡藩喜多流能楽師の娘・千代子と結婚。
富士山頂で最初の越冬観測を試みたことで知られる。著作に『富士案内 芙蓉日記』がある。家紋は、御殿場馬車鉄道の社章からの転用か?この紋の判別に関しては、「家紋の真実」を主宰、日本家紋研究会副会長の高澤等先生にご教授頂きました。
宮田輝。1921年12月25日 – 1990年7月15日、元NHKアナウンサーで参議院議員。
東京都出身。本名・みやた あきら。
「三つの歌」「NHKのど自慢」「ふるさとの歌まつり」の司会担当。
NHKにおいて、高橋圭三や青木一雄らと同じく、「芸能番組向けアナウンサー」の先鞭を付けた人物の一人に数えられる。
佐藤栄作。1901年3月27日 - 1975年6月3日、政治家。
現在の山口県熊毛郡田布施町に酒造業・佐藤秀助、茂世(もよ)の三男として生まれた。
第61、62、63代内閣総理大臣。
日韓基本条約の批准、公害対策基本法の制定、小笠原諸島・沖縄の返還実現。
非核三原則やアジアの平和への貢献を理由としてノーベル平和賞を日本人で初めて授賞。
石坂洋次郎。1900年1月25日 – 1986年10月7日、小説家。
青森県弘前市代官町生まれ。
戦後は『青い山脈』を『朝日新聞』に連載。映画化され大ブームとなり、「百万人の作家」といわれるほどの流行作家となる。第14回菊池寛賞を受ける。
代表作は『陽のあたる坂道 』『若い人』『青い山脈 』など。
服部半蔵。戦国時代から江戸時代初期にかけての武士。
松平氏〜徳川氏の麾下で活躍。家紋は、源氏車に矢。
半蔵門は、徳川家の家来服部正成・正就父子の通称(半蔵)に由来する。
「伊賀の影丸」「あずみ」「サムライスピリッツ」などのフィクションに登場。
藤子不二夫の「忍者ハットリくん(画像)」は服部半蔵の子孫。
まさむね