PAST MASTERS VOL.2 TOCP-51126 ●ビートルズの後期(1965年12月以降)のシングル曲を収録 |
後期の編集版といえば、青盤もあったけど、最終的にこういう形でこれらの曲を聞けるようになったんだ。ビートルズの成長といろんな嗜好がわかるお得な1枚だよね。 |
Day Tripper ★★★☆☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=John,Paul 収録日=1965/10/16 ●We Can Work It Outとの両A面として発売(でも両A面ってどういう意味か?)。 リフで引っ張っていくこのDay Tripperはストーンズとかも意識していたんだろうか。ちょうど、ビートルズの歌が段々サイケ色に変化していく時期の曲。ジョンも、この曲の事をはっきり、ドラッグソングと言っている。 また、歌詞にも、一筋縄でいかない部分が出てくる。 ここの部分を文章として解釈すると、2つの解釈がそれぞれ、以下のようにも訳せる。 She’s a big teaser, she took me half the way there そういえば、この曲のプロモで、リンゴが電車のセットをノコギリで壊すという(?)なシーンがある。とってもシュールだ。 そういう発想するとやっと、リンゴが切り取ってた柱が、実は、ギターフレーズを構成する「音」だったんだなってことがわかるんだよね。 一度聴いたら忘れない印象的なフレーズ。これも天才の発想。 |
We Can Work It Out ★★★★☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=Paul,John 収録日=1965/10/20,29 ●ジョンとポールの共作。途中ワルツにしたのはジョージのアイディア。 ●邦題は「恋を抱きしめよう」。 しかし、「恋を抱きしめよう」っていうのは意味不明なタイトルだよな。どうすればいいの? それはともかく、Aメロはポール、サビはジョン、味付けにジョージって3人が1曲にいいアイディアを出し合うっていうビートルズ最高の合体形態がこの曲。 歌詞は、ポールの部分は確かにで強引だ。無理矢理の前向きともいえる。女を口説くとき、この位の前向きさは誰でもする(?)でしょ。 Try to see it my way, Do I have to keep on talking till I can’t go on? 一方、ジョンの書いた部分は以下だ。 Life is very short, and there’s no time For fussing and fighting, my friend. 一般にこの部分は悲観的と言われるが、僕はそれほどでもないと思うな。 1)No Reply 2)I am a loser 3)Yeh Blues ジョンとポールとジョージの発想が見事に融和した名曲。 |
Paperback Writer ★★★☆☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1966/4/13,14 ●Revolverと同時期に録音されたシングルA面。 ●ポールの曲ではじめて恋や女とは無関係な曲。 ●東京公演でも演奏された。 ポールの弾くベースは、テクニックも、音も秀逸。 実は歌詞を追っていくと変な部分がある。 一番と三番と四番はペイパーバックライターになりたいという手紙の内容だ。「ペイパーバックライターになりたいです。」「お望みならばもっと長く書くことも出来ます。」「お気に召したなら、著作権も御社に差し上げます」「見込みがなければ送り返してください」っていう具合だ。だが、二番だけが異質だ。ペイパーバックライターになりたいヤツの説明だ。 It’s the dirty story of a dirty man And his clinging wife doesn’t understand. なんと、ペイパーバックライターになりたかったのは、持ち込んだ小説の中の人物だったのだ。これはエッシャーのダマシ絵のような風景(鏡に向かって鏡を向けているような風景といってもいいのだが)ではないか。小説の中の人物がペイパーバックライターになりたとすれば、その小説を書いたペイパーバックライターがいるが、そいつも小説の中の人物で...って感じで永遠に循環する構造の中にいる、眩暈がするよね。 このころシュールレアリズムに凝っていたというポール。リスナーをちょっとした混乱に陥れる、こうした手法にイタズラ心が垣間見られる。Maxwell’s Silver Hammerとちょっと似たセンスだよな。 絶妙なコーラス、ランニングベースが最高。 |
Rain ★★★★☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1966/4/14,16 ●Paperback WriterのB面。 ●テープの逆回転を始めて導入した。 中山康樹氏大絶賛のこの曲。どこがいいのかって言えば、「曲がいい」ってことらしい。僕もこの曲は大好きだ。リンゴのドラムも逆回転のところも好きだ。 でも、僕はこの詞も好きだ。 Can you hear me, that when it rains and shines, この「外界に惑わされない自分」、あるいは「外界なんてどうでもいいという自分」というコンセプトは、その後の、Strawberry Fields forever、I am the Walrus、Across the Universeへとつながっていく。 1)Strawberry Fields forever さらに、この姿勢は、自分のまわりの騒音をそのものに惑わされずに音楽として聴いてしまおうというアバンギャルド、Revolution 9へと続くのである。 重厚なドラム。リンゴの仕事の中でも最高傑作。 |
Lady Madonna ★★★☆☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/2/3,6 ●ビートルズ17枚目のシングル。 サージェントペパーで凝りに凝った音楽を聴かせたビートルズの次なる作品がこれ。 あまりにもシンプルでフィフティーズポップスを思わせるような曲調やアレンジに当時は、みんな「そう来たか!」って感じだったらしい。 ウィングスのライブアルバム「Wings over America」でも演られている。僕は、そのバージョンを真似したピアノの練習をして人前で演ったよ。リズム感の無い僕はみなさまにご迷惑をかけたな。 しかし、皮肉な事に、後々このLady Madonnaはそのまま、アップル社の自己パロディになってしまうのでした。 Wonder how you manage to make ends meet シンプルながら優しいポールの人柄がにじみ出る曲。 |
The Inner Light ★★☆☆☆ ◆(George) V=George 収録日=1968/1/12,2/6,8 ●Lady MadonnaのB面。 ●この曲を歌うかどうか悩んでいたジョージに対して、ポールが「やってみろよ、大丈夫、いい曲なんだから」って励ましたという。 The 比較級、The 比較級 で、~すればするほど、~になる っていう文法は、高校の英語の時間を思い出すよね。 The farther one travels ジョンも、外界に惑わされない自分というコンセプトを持っているけど、ジョージは真実の知は内面にあるってコンセプトだよね。 Within you without youでもこう歌ってる。 Try to realize it’s all within yourself メロディ、歌詞ともにジョージらしい隠れた名曲。 |
Hey Jude ★★★★★ ◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1968/7/31,8/1,2 ●ビートルズナンバーの中で最大のヒット。 ●ジョンが離婚したことによって、父親を失ったジュリアンを励ますためにポールが書いた。 ●JudeをJew(ユダヤ人)のことであるとして、差別的な歌だと言われた。 ポールの優しさ溢れた曲。たしか、この曲を作った月にポールは婚約破棄を発表したんだよね。 破れた恋の数だけ他人の優しく出来るって歌ったのは細川たかしだが、僕はここでポールの気持ちが痛いね。 この曲を聴いたジョンは自分とヨーコのことを励ますための曲だと解釈したんだから、その脳天気さはそれはそれで天才的だ。 このポールのジュリアンに向けての励ましソングは、同時に世界に受け入れられた。世界への励ましソングになっていくんだ。 Don’t carry the world upon your shoulders. これが全世界の運動家の心とシンクロした瞬間、この曲は大ヒットしていく。例えば、ソ連に蹂躙されたチェコスロバキアでは、このHey Judeをマルタ・グビショバという人がカヴァーし、歌詞を替え、自由をうたいあげたんだよね。音楽の力が民衆のエネルギーに火をつけることがあるんだな。 当時、僕は小学校3年生だったけど、土曜日の午後に大橋巨泉が司会をしていたポップス番組で、「僕は、B面のRevolutionの方が好きだな」というような事を言ったのを何故か覚えている。 でも、やっぱり一筋縄ではいかないのがポールの歌詞。Penny laneやAll together nowと同じようなエッチな隠語が潜んでいる。それはここだ。 So let it out and let it in, hey Jude, begin, 内田さんの訳は素晴らしい。でも僕は邪推訳をする。 …失礼しました。 ビートルズの代表中の代表曲。 |
Revolution ★★★★☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/7/10,11,12 ●Hey JudeのB面。 ●日産プレサージュのCMで使用(ただし、曲はCM用にアレンジ 歌手はアンジェラ・ジョンソン)。 ●一時、天龍源一郎の入場テーマ曲として使用される。なんとなく変だったため、すぐにサンダーストームに戻る。 ●もともとシングルにするために作った曲がテンポが遅くてシングル向きではないと判断され、スピードをあげ、シングル用にアレンジしなおした。ただ、後にHey Judeが作られ、この曲はB面に追われた。ジョンのトラウマとなる。 この曲は題名から来るイメージとは違い、聴き様によっては、革命に水を差す内容になっている。 ニーチェは「人間的なあまりに人間的な」の中で、「ものをよく考える人は党員にはなれない。思考は必ず党をはみだすからだ」という。 ジョンの微妙な立場を表してるような気もする。 僕はこのRevolutionの歌詞を見ていて一つの事に気づいた。 「世界を変えたいと思っている」「計画をきかせてもらおうか」「僕に出来ることなら何でもするよ」って革命に肯定的なセリフはすべて主語が「We」になっている。 ホワイトアルバムが1968年自体をパッケージングしたアルバムって呼ばれるが、そういった時代の揺れ動きを自分の内面の揺れ動きとして感じていた人が少なからずこのアルバムに共有したからではないかと思うのである。 そして、時がたち、現代の視点から見ると、ジョンは至極まっとうなことを言っているように思える。 「暴力のためだったら、僕は抜ける。そこに花を飾るのでなければ、僕がバリケードに加わるようなことは期待しないでくれ。マルクス主義やキリスト教の名の下に何かを粉砕するからには、すべてを粉砕した後に、いったい何をやろうとするのかが知りたい。僕がRevolutionのすべてのバージョンで言ったのは、”change your head(君の頭を変えろ)”ということだ。」 でも、当時はそれもノンポリと批判されたんだよね。行動するのか、しないのかって2分法で言えば、実は、Hey Judeの方がRevolutionよりも行動を促す曲だったんだね。 ジョンの攻撃的な秀曲。 |
Get Back ★★★★☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1969/1/28 ●ルーフトップコンサートでの演奏。 ●クレジットでビートルズとビリープレストン となっている。 ジョンがリードギターを弾いている。テクニックというよりもセンスが抜群だ。ジョンが嬉々として弾いている姿が僕は嬉しい。 心はもうビートルズになかったジョンだけどギターを持たせたらやっぱりロックンローラーだよな。僕も高校の頃、ドラムやったけど、楽しかったな。 この歌で楽しいのは、間奏の間に入る「Go home」のタイミングだな。 シンプルなロックンロール。大ヒット曲だよね。 |
Don’t Let Me Down ★★☆☆☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1969/1/28 ●Get backのB面。 ●ジョンがヨーコに向けて作った。 ●何故か、Let it Beのアルバムには収録されず。Nackedでは収録。 Don’t Let Me Down 僕を見捨てないでくれ ジョン得意の懇願系のラブソング。Please please meから、このDon’t Let Me Downまで、これはジョンの特徴だよね。 I’m in love for the first time. 永遠の恋なんてことは、ヨーコと出会う前には見られなかったフレーズだよ。 ドンレットミーダーン♪って何回叫んだ事か。 |
The Ballad Of John And Yoko ★★★★☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1969/4/14 ●Get backに引き続きシングル盤として発売。 ●レコーディングはジョンとポールの2人で行われた。 ●邦題は「ジョンとヨーコのバラード」。 ジョンの私生活をつづっている。サウンドにはジョン特有の憂鬱感は全く感じられない。リンゴが参加していないからかわからんが、悪く言えば軽い、よく言えば軽快なポップス。歌詞にはいたるところに興味深いフレーズが見られる。 しかし、この頃のジョンとヨーコはお気楽だ。 The man in the Mac said, “You’ve got to go back”. で、なんで出国できなかったのかって言えば、どうやらパスポートを持っていなかったらしいんだよね。別に社会(国家)が二人の自由を阻害したっていう大げさな話じゃないと思うんだが。 Christ you know it ain’t easy この曲発表から4年くらい前にビートルズはキリストより有名発言でバッシングを受けたジョンだが、もう、そういった過去を吹っ切ったような表現だ。このフレーズのおかげでアメリカでは、放送禁止になった放送局も沢山あったようだけど、もうそんなことに気をつかうようなジョンではなかった。 You can get married in Gibraltar, near Spain”. こういう手続きはマネージャーにやらせるジョンとヨーコ。お気楽だ。ジブラルタル生命保険のCMで、この時、ジブラルタルロックの前でジョンとヨーコが撮った記念写真が使われてたよね。 The newspapers said, “Say what you doing in bed?” これは、あの有名なベッドインの事だ。「僕たちは平和のセールスマン」って言って、ベッドから2人で平和をアピールしたんだ。「ホテルのスイートを使いやがって、その金は寄付しろ」とか、「そんなことしても世界は変わらないぞ」、みたいな非難をされた。でも当時の学生運動、平和運動に与えた影響は大きかったんだ。 Giving all your clothes to charity. これは、アップルブティック閉店の際に、無料で服を客にあげたことをさしてるんじゃないかな。これも今考えれば、無謀は笑い話だよね。ちなみに、その前日、ヨーコは自分の欲しい服を全部持っていったそうな。さすがちゃっかり者。いや、しっかり者。 eating chocolate cake in a bag. 僕の想像だけど、これはなんらかのドラッグ入りのケーキだろうな。当時、日本でだってLSD入りの自作チョコとか、みんなで食べたっていうからね。 They look just like two gurus in drag”. このin dragは、ポリシーパンでも出てくる。風変わりなって訳すんだろうか。でも字義通り、「薬漬けになって」って訳してもいいんじゃないかな。実際そうだったんだから。 Fifty acorns tied in a sack. これはドングリイベント(※1968年、ジョンとヨーコが平和を祈って、ドングリの苗を植えたり、全世界の指導者にドングリを送ったりした)のことを念頭に置いている。 The way things are going 行動的なジョンとヨーコ。だけど世の中は変わったのだろうか。少しづつ変わっているといえばそうだし、変わっていないといえばそうだ。 世界は、ジョン一人を磔にして、何も無かったかのように昨日と同じように続いていく。 「ホタテをなめるなよ」と間違わないでね。 |
Old Brown Shoe ★★★☆☆ ◆(George) V=George 収録日=1969/4/16,18 ●The Ballad Of John And Yoko のB面。 ●何故か青盤にも収録されていた。 ●ベースを弾いているのはポールなのかジョージなのか、未だに論争が続いている。 Now I’m stepping out this old brown shoe 僕は、これはジョージの決意表明ととるな。勿論、このOld Brown Shoeはビートルズのことだ。 You know you pick me up from where some try to drag me down この動物園(zoo)というのは、Baby you are rich manでも使われている。ビートルズたちはすべての行動を世間から見られ続けていた。そのプレッシャーというは大変なものだったに違いない。彼らは、自分たちを動物園にいる動物って感じてたんだ。 でそういった嫌なものから離れよう。そういうメッセージソングだよね。 Do you want to know a secretのシャイな仮面、Don’t bother meの身勝手な引きこもりから、時間がたってジョージも大人になったな。 ビートルズの楽曲の中でも1位、2位を争うほどの名演。 |
Across The Universe ★★★★★ ◆(Lennon=Maccartney) V=John 収録日=1968/2/4,8 ●世界野生動物保護基金救済チャリティーアルバム「No one’s gonna change my world」に収録されたバージョン。 ●オープニングの鳥の羽ばたき音が入っていることから通称バードバージョンと呼ばれている。 ●Let it be にされた収録バージョンに比べてテンポははやい(っていうかLet it be バージョンが遅い)。 ●女性コーラスは、スタジオの外にいたおっかけの娘をその場で連れてきて使ったという。 ジョンを語る上で重要なナンバー。 「みんなが口にすることといったら何とかイズムばっかりだけど 僕らがいっているのは”平和を我らに” ただこれだけさ」ってね。 もっとも、リシュケシュっぽい至上の名曲。 |
Let It Be ★★★★★ ◆(Lennon=Maccartney) V=Paul 収録日=1969/1/31,4/30 ●シングルバージョンのプロデュースはジョージマーティン。 ●ジョージの間奏のギターがどちらかといえば地味なバージョン。 この曲も僕が高校の時、人前でやったな。ピアノだった。ギターのM君はまよわず、スペクターバージョンのギターを弾いていた。 70年代はギター最盛期だから、より派手なギタープレイのスペクターバージョンの方を選択するのは当然だった。 当時は、僕たちにとって、プロデューサーのマーチンのプロデューサーとしての存在なんて誰も重要視してなかったからな。っていうか、そんなの気にするようなレベルじゃなかった。これは僕たちって言うよりも、その時代のリスナーのレベル、送り手側の意識も含めてのレベルが現代に比べるとだいぶ違っていたっていうことなんだな。 だから、アルバムの音が、その頃の思い出と一緒に染み付いてしまった僕は、Nakedって言われても、これが本物ですって言われても、待ってましたという感じではなかったな。(だから、本サイトではネイキッドのレビューはありません。) こっちのLet it beは、最後のレリピーのコーラスが1回少ないんだよね。それだけでなんか損したような、感じがしたもんだ。当時日本は、っていうか僕たちは貧しかったということかな。 おそらく日本で最も人気のあるビートルズナンバー。 |
You Know My Name[Look Up The Number] ★☆☆☆☆ ◆(Lennon=Maccartney) V=John,Paul 収録日=1967/5/17,6/7,8,1969/4/30 ●サックスはストーンズのブライアン・ジョーンズが吹いている。上手い。 ●Let it be のB面。 メリージェーンとかRevolution9に通じるようなコンセプチュアルさを感じさせる遊び歌。 You Know My Name [Look Up The Number] っていうのがファンに対する最後のメッセージっていうのも、皮肉たっぷりでビートルズらしいよね。 これが最後の1曲でした。 最後がビートルズで一番、変な曲っていうのもビートルズらしいかも。 |