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ジェロの海雪等 J-POPと日本の古典文学

Friday, April 25th, 2008

どんな曲にも必ず、キラリと光る一節を持っている宇多田ヒカルの歌詞。
2001年のヒット曲「Traveling」には、平家物語の冒頭の一節(祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり・・・おごれる人も久しからず ただ春の夜の夢のごとし)が引用されている。

風にまたぎ月へ登り
僕の席は君の隣
ふいに我に返りクラリ
春の夜の夢のごとし

金曜の夜の彼女とのデートで盛り上がる気持ちを歌った曲だが、その盛り上がりに水をさす自分の心の中のスキマを、平家物語の無常観をしのばせる事で刹那的に表現する彼女の文学的センスが光る。

また、その他古典文学を意識したフレーズとしては、ジェロの海雪に出てくる「出雲崎」。
ここは古来からの歌枕の一つで、芭蕉が「奥の細道」の中の名句「荒海や佐渡に横たふ天河」を詠んだと言われているが、おそらく、この海岸から佐渡を眺めた芭蕉は、世阿弥、日蓮、順徳院等、佐渡に流された先人の苦難を偲び、この句をしたためたのであろう。

勿論、秋元康もそれを踏まえての作詞だと思われ。

さてもう一つは、湘南乃風の「純恋歌」に出てくる以下のフレーズ

桜並木照らす おぼろ月
出会った二人の場所に帰りに一人寄り道

「桜」に「朧月」といえば、「源氏物語」の花宴の巻。光源氏とライバルの右大臣家の大事な娘(朧月夜)との危険な恋を暗示するシーンとしてあまりに有名だ。

地元土着型労働者階級の歌声を代表する若旦那(湘南乃風)の教養を感じさせる一節だ。

まさまね