三つ鱗紋は北条家の紋として知られている。
その昔、北条時宗が家運興隆を祈念して、江ノ島弁才天に参った際に、女房が現れた。
その女房が北条家の家運上昇を予言した後、大蛇になって海中に姿を消した。
そして、その後に残った鱗三枚を持ち帰って北条家の家紋としたというのである。
この三つ鱗は、北条氏が滅びた後も、戦国時代の後北条家も含め家紋として採用した。
今でも、弁財天では波と組み合わせて三つ鱗紋を定紋としている。
写真は、吉祥寺の弁財天の提灯。
さて、この三つ鱗だが、モンゴル出身の横綱・白鵬の紋である。
今から700年前の元寇を迎え撃った北条時宗と同紋というのは、これいかに。
横綱になったことで、日本を制圧したことの印として元寇の復讐を果し、念願の相手の大将の家紋を奪い取ったということなのだろうか。
あるいは、この三つ鱗を身に付けることによって、日本の味方になり、もう一人の横綱・朝青龍を迎え撃つ覚悟の印として三つ鱗を採用したということなのか。
いずれにしても、興味深い。
また、19世紀初末のウィーン分離派の巨匠・クリムトの「幸福への憧れ」にも三つ鱗と同様の文様が見られる。
実際、日本の家紋台帳はヨーロッパに輸出され、アール・デコの芸術家のネタ本になっていたという。
もしかしたら、この絵画に描かれている三つ鱗は、クリムトが、日本美術に影響を受ていたということの証なのかもしれない。
さて、鱗紋の全国分布だが、福岡、大分、大阪、和歌山、三重、神奈川で30位に入っている。
ちょうど、瀬戸内海を通って、太平洋に出て関東までのルートにこの紋が散見されるというのも、面白い。
元々、海上民のシンボルだったのかもしれない。
鱗紋を持つ有名人は以下だ。
北条早雲。1432年 – 1519年9月8日、武将、戦国大名。
伊勢宗瑞。室町幕府の政所執事を務めた伊勢氏の出自とみられる。
関東一円を支配する戦国大名に成長する北条氏の基礎をきずいた。
戦国大名の嚆矢であり、早雲の活動は東国の戦国時代の端緒として歴史的意義がある。
家紋は北條鱗。三つ鱗に比べ、ひしゃげている。
種子島時堯。1528年 - 1579年10月21日、種子島の領主。
島津氏に属し、時尭は種子島氏の第十四代領主(島主)。
1543年、種子島に漂着したポルトガル商人から鉄砲を購入。
鉄砲を分解させて調べさせ、鉄砲製造に成功する。
鉄砲は種子島銃とも呼ばれ、戦国時代に大きな影響を及ぼす事になる。
平野長泰。1559年 - 1628年6月8日、武将。
尾張津島の出身で、若年にて秀吉に仕えた。
賤ヶ岳の戦いで「賤ヶ岳の七本槍」と称えられた。
関ヶ原の戦いでは東軍に付き、旗本として徳川秀忠に仕えた。
徳川秀忠旗下で旗本として仕え、子孫は九代続いて明治まで生き残る。
島田魁。1828年2月29日 – 1900年3月20日、守衛新選組隊長。
美濃国方県郡雄総村出身。庄屋近藤伊右衛門の次男として生まれる。名古屋城内の御前試合で優勝し、大垣藩の嶋田才に見初められ養子となり嶋田家を継ぐ。江戸に出て心形刀流を修得。箱館まで戊辰戦争を戦い抜いた。後に、榎本武揚が「旧交を温めたいので宿舎まで来て欲しい」と面会を申し入れたのに対し、「会いたいという奴の方から出向くのが筋だろう」と断ったという。西本願寺の夜間警備員として一生を終える。
横井小楠。1809年9月22日 – 1869年2月15日、熊本藩士、儒学者。諱は「時存」。
横井家は桓武平氏北条氏嫡流得宗家に発する。
松平春嶽の政治顧問として招かれ、福井藩の藩政改革、さらには幕政改革をする。
また、私塾「四時軒」を開き、多くの門弟を輩出した。
新政府に参与として出仕するが、翌年暗殺される。
山県有朋。1838年6月14日- 1922年2月1日、政治家、軍人。第3代、第9代内閣総理大臣。
萩城下近郊の阿武郡川島村に、長州藩の中間・山縣有稔の長男として生まれる。
足軽以下の中間身分。高杉晋作が創設した奇兵隊に入って頭角を現わす。
明治新政府では軍政家として手腕をふるい日本陸軍の基礎を築いて「国軍の父」とも称されるようになった。家紋は丸に三つ鱗。
横井英樹。1913年7月1日 – 1998年11月30日、実業家。
1913年、愛知県中島郡平和町の貧しい農家に生まれ、東京日本橋の繊維問屋に丁稚奉公した。その後進駐軍出入りの商人となり、一財産を築いた。
その後、老舗百貨店、白木屋の株買占めや東洋郵船設立による海運業への進出、ホテルニュージャパンも買収などで脚光を浴びた。
白鵬。1985年3月11日 – 、モンゴル国ウランバートル市出身で宮城野部屋所属の現役大相撲力士、第69代横綱。
父ジグジドゥ・ムンフバトはブフ(モンゴル相撲)で、5年連続6度の優勝をした元アヴァルガ(モンゴル相撲の横綱に相当)。メキシコ五輪のレスリング重量級銀メダリスト。
歴代の不知火型の横綱では史上最多の優勝回数を誇る。
まさむね