結果はご存知の通り、朝青龍が23回目の優勝を果たした。。
貴乃花の22回を抜き、北の湖の24回にあと1回と迫った。大記録だ。
思えば、今場所の朝青龍は、誠に危なっかしい出足だった。
三場所の全休。稽古も十分に出来ていない。
場所前のけいこ総見では、白鵬に全くかなわなかったという。
多くの評論家が今場所は出場さえしないのではないかと予想していた。
そんな中で朝青龍は出場を強行したのだ。
最悪の場合、引退をかけての出場になる。大丈夫か朝青龍。
初日は、そんなプレッシャーの中での稀勢の里戦である。
もともと、苦手としていた相手だ。大相撲協会も酷なことをするものだ。
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その一番、立ち会いに稀勢の里に突っ張られ、右上手を取られ、土俵際まで追い詰められた。
しかし、そこから朝青龍の逆襲が始まる。
その後、左を巻き変えて怒涛の逆寄り。
最後は、右と左と、稀勢の里への顔面に張り手。
追い詰められた横綱の意地が表れた瞬間だ。
朝青龍の強さの源はこの意地である。
格闘家本来の、絶対に負けたくないという気持ちが人一倍強いのだろう。
勿論、日々の稽古が大切というのは言うまでも無いことであるが、朝青龍の存在は、それ以上に本番での気迫が重要である事を改めて示してくれた。
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同様のシーンは、7日目の嘉風戦でも見られた。
嘉風は、先場所、前頭12枚目で11勝し、今場所、初めて朝青龍と対決する位置(前頭2枚目)まで上がってきた新進気鋭の若武者である。
普通、初顔合わせの力士は横綱に対しては、ほとんど何も出来ないのだが、この嘉風は違った。
立会いのから激しい張り合いの応酬、その中で嘉風は、朝青龍の顔に張り手に行ったのである。
勝負は、朝青龍が送り出しで辛勝したものの、勝負がついた後、勝ち名乗りを受けている時でもまだなお、朝青龍は嘉風をにらみ続けていたのだ。
「横綱としての顔」を超えた、格闘家・朝青龍としての本能を垣間見せた一瞬であった。
おそらく、こういった表情を出せる力士は、朝青龍をおいて他にはないのではないだろうか。
相撲の本質はやはり、格闘技である。そして、格闘技の本質は相手を倒したいという本能である。
そして、現在の大相撲の力士の中で、その格闘家としての本質を、最も身に付けているのが朝青龍なのである。
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そして、ついに迎えた本日の優勝決定戦。
本割の立会いに失敗し、白鵬に完敗して、1敗同士で並ばれた朝青龍。
決定戦を待つ間、支度部屋で立会いの練習を繰りかえす朝青龍。
一方の白鵬は目をつぶって精神統一。
対照的な二人の姿。追い詰められた朝青龍、と誰もが思っただろう。
しかし、朝青龍は強かった。立会い鋭く、白鵬の左下手を引き、頭をつける。白鵬に左をささせない。
そして、一気に白鵬を土俵の外に寄り切ったのだ。
おもわず、土俵上でガッツポーズを見せる朝青龍。
日頃、「横綱の品格」とやらを口にするような。いわゆる・うるさ型(やくみつるや内館牧子達)を完全に黙らせる、乱れ髪のままの喜びのポーズだ。
そして、花道を引き上げていく時、うっすら目に涙を浮かべて顔をぬぐう朝青龍の姿は、誰をも感動させたシーンであった。
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まだまだ朝青龍は大丈夫だ。
今回の優勝も嬉しいが、来場所からも、またその勇姿を見れるのは何よりも嬉しい。
まさむね